第6章 流されて異界
第103話 試験直前
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と表現しましたが、それが間違いだった事に気付いた。
あれは躊躇いなどではなく、疑問。まるで、探るような視線。彼女の問いに対する俺の答えから、その際の細かな仕草まですべて見逃すまい、とするかのような強い瞳で俺を見つめるハルヒの姿が其処に存在していたのですから。
もっとも……。
「そんな抽象的な言葉で的確な答えが返せる訳がないやろうが」
一応、赤点を取らない為に、こうやってギリギリまで試験勉強は続けて居るけどな。
少し皮肉めいた言葉で、更なる情報を引き出そうとする俺。それに、この俺自身が彼女と交わした約束は、その期末試験で赤点を取らない事だけ。いや、これにしたトコロで、ちゃんとした約束などではなく、一方的に押し付けられたモノ。俺が絶対に守らなければならない約束と言う訳ではない。
「あんたがバイクの免許を取ったら、一番にあたしを乗せてくれるって言う約束よ」
しかし……。いや、矢張りと言うべきか。矢張り、ハルヒの口にした約束と言うのは、俺が試験で赤点を取らないなどと言う物ではなかった。
当然、水晶宮から渡された資料にはそんな約束に関する記述など存在する訳もなく……。
【不明】
頼みの綱の長門さんの答えもコレ。確かに、俺の事を何から何まですべて知って居る訳はないので、これはこれで仕方がないのでしょう。ただ……。ただ、何故か少し言葉に険が有ったような気がしないでもなかったような……。
しかし、
「そんな約束をした事があったか?」
あまり不自然な間を開ける訳にも行かず、少々、苦し紛れにそう答える俺。
但し、ハルヒは俺の誕生日が十二月だと言う事を知って居た以上、何かの拍子にそう言う方向に話が弾んで俺……異世界同位体の俺がテキトーに答えた可能性もゼロではない。
確かに俺には移動用の魔法が存在するので、バイクや自動車などの科学的な移動手段は急場には必要ない。しかし、現代社会で暮らす上で、その手の移動手段を持つ事は損には成らないので、絶対に取らないと言う訳でもない。
今の俺に興味……。特に、ハルヒとニケツで街を走る事に興味がなかったとしても。
「何よ、そんなに簡単に忘れるほど軽い約束だったって言うの?」
しかし、かなり不機嫌。つまり、普段通りの仕草及び雰囲気でそう答えるハルヒ。更に、この言葉自体は割と一般的な内容で、其処から何か新しい情報を得る事は出来なかった。
ただ……。
ただ、ほんの少し。本当に微かに落胆のような色を感じたのですが……。
もしかすると、本当に俺は彼女と約束を――
ハルヒを真っ直ぐに見つめながら、そう考える俺。そんな俺をしばらくの間強い視線で睨み付けて居たハルヒ。
しかし、
「まぁ良いわ」
そう冷たく言い放ち
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