第6章 流されて異界
第103話 試験直前
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翼竜の背でタバサに抱き着かれた時のような重さを感じる事もなく軽い……速さも、そして彼女の体重すら感じる事ないほど柔らかな形で俺の胸の抱きつく長門さん。
一瞬にして跳ね上がる鼓動。乱される呼吸。
そうして、
「例え、今、あなたの大脳が記憶していなくても――」
俺の胸に耳を当て、其処から発するすべての音を逃さず聞き取ろうとする彼女が静かに……。自らが感じて居る俺の生命のリズムの邪魔にならないような小さな声でそっと呟く。
「ここには、間違いなくわたしとの思い出が残されている」
☆★☆★☆
冬晴れの氷空から届く陽光が窓越しに教室内に降り注いでいた。
「あんた、本当に身体が弱かったのね」
その日……学期末試験初日は、呼ばれもしないのに、わざわざシベリアから張り出して来た寒気団の影響からか、この冬に成ってから初めて最低気温が三度以下を記録。只でさえ期末試験と言うテンションだだ下がりの日に、この冷たい朝。
流石に一応は冷暖房が完備されているとは言え、冷房に比べて暖房が使用される事は少なく、また寒いとは言っても、ここは厳冬下の雪国と言う訳でもないので……。
正直、昨日の放課後の一件を理由に、長門さんのマンションの和室で寝て居たいと思っても仕方がない状態なのですが。
「なんや、ハルヒ。俺の言う事がそんなに信用出来へん言うのか?」
前にも言ったと思うけど、俺は低体温で低血圧。おまけに鉄欠乏性貧血と言う薄幸の美少年に相応しい設定持ちの人間。ついでに見た目もアレな蒼髪、オッドアイやからな。
視線は自らの手元。長門さんが用意してくれた期末試験の予想問題とその模範解答を交互に眺めたままの状態でそう答える俺。
何ともいい加減で気のない答え方。但し、試験初日の一発目が一番苦手な英語T。二単位ある英語の片割れの方。此処で弾みを付けるか、それともひっくり返るかで、その後の展開は天と地ほどの差が出て来ますから。
尚、本来……俺の暮らして居た世界での二〇〇二年の二学期末テストの一発目は矢張り英語Aで、その時は遅刻寸前で教室にすべり込み、試験直前。最後の山掛けすら出来ずに試験に突入。しかし、その結果は英語のテストとしては過去最高の七十八点を叩き出すと言う快挙を成し遂げた試験でも有りましたか。
実際、二学期中間試験の惨状から、六十点以上叩き出さなければ冬休みの補習確定だっただけに、気合いの入り方も違ったと言う事です。この時の俺は。
尚、追い詰められている状況としては、今回と似ていると言えなくもないのですが。
「本当に大丈夫ですか、武神さん。昨日の今日だから、休んでも問題なかったと思うけど」
こちらの方は非常に申し訳なさそうに。朝から謝ってばかりで、俺の方が返って恐縮す
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