第6章 流されて異界
第103話 試験直前
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いたのかどうか判らないレベルで首を横に振る長門さん。
「あなたの身体に起きた影響は悪い物ではなかった」
何時にも増して小さな囁くような声で、そう話す長門さん。確かに、現在の体調が悪い訳ではないので、俺に起きた状態はアナフィラキシーショックと言うよりは好転反応のキツイ奴と考えた方が妥当かも知れない。俺の怪しげな知識が確かならば、薬効がある物に対して身体が過剰な反応を示す場合が稀に存在するらしいですから。
ただ、故に、ある程度の好転。身体の調子が良く成る事が分かっては居ても、こんなキツイ反応を示す成分を取り入れる事は以後、禁止する場合がほとんどだと言う話なのですが。
相変わらず、深いのだか、浅くて広いのだか分からない知識の海で溺れ掛けの俺。
そんな俺に対して、それに……と、俺の瞳を真っ直ぐに見つめたまま、長門さんは更に続けて、
「本来のわたしは、人間が必要としている睡眠を必要としていない」
……と言う台詞を口にした。
彼女に相応しい透明な表情。ただ、それだけの理由で夜通し俺の傍らに居てくれるとは思えませんから――
「成るほど」
ほんの少し……。具体的には拳ひとつ分ほど彼女に近付きながら、ひとつ呼吸を入れる俺。理由は……ない。ただ、何となく一拍分の間が欲しかっただけ。
正直に言うと、本当は照れてこんな事は言える訳はない、と言う内容を口にする心算だから。
「それでも長門さんが俺の傍に居てくれたのは事実やし――」
繋がれていた彼女の右手と俺の左手はそのままに。一度切って仕舞った視線を彼女の深く、澄んだ瞳に合わせ、
「独り暮らしが長く成りつつ有った俺に取って、朝、誰かに挨拶が出来るだけで幸せなモンなんや」
違和感を与えないようにそう言う台詞を口にする俺。
但し、俺が独り暮らしをやって居たのは元々俺が暮らして居た世界での話。ハルケギニアでは既に別の家族が居る事は気付いて居るはずですから。
彼女も……。
微かに。本当に微かに首肯いて答えてくれる長門さん。
但し、妙に作り物めいた容貌に貼り付く無に、その時、僅かに翳が差したように感じたのは……。
果たして普段の彼女が浮かべて居るそれと同じ物なのか。それとも別の理由なのか。
ただ、ひとつ言える事は……。
「す――――」
彼女が時折見せる暗い……翳を感じさせる表情は多分、俺の所為。本来なら召喚されるはずだった異世界同位体の俺の代わりに、ハルケギニア世界を追放された俺を召喚して仕舞った為に……。
おそらく、異世界同位体の俺と今の俺の違いが、彼女に僅かながらの翳の部分を作って居るのでしょうから。
しかし、俺がすべての言葉。謝罪の言葉を口にする前に、長門さんの左手の指一本に因って封じ
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