第6章 流されて異界
第103話 試験直前
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が発生する可能性もゼロではないのですが。
何故ならば、ハルヒが以前に発現させていた能力は王国能力。言霊ほど強い強制力がある訳ではないのですが、それでも有る程度の強制力と言う物は発生する能力。
そして、俺は契約を守る事を重視する人間ですから……。
しかし――
「ストップ!」
平気な顔をして何を言い出すのよ。小さな声で何やらぶつくさ言いながら、俺に待ったを掛けるハルヒ。普段はしつこいぐらいに俺を睨み付ける彼女が、何故かこの瞬間はやや視線を俺から外しながら。
……と言うか、彼女と交わした約束と言うのは、彼女がツンデレ・モードに突入する類の内容だったの言う事なのでしょうか。
巫女の口寄せに似た状態なだけに、俺は自分自身がこれから何を言い出すのか判らない状態なのですが。
「と、取り敢えず、信じて上げるわよ!」
先ほどと同じ勢いで踵を返しながら、そう言うハルヒ。但し、心の在り様は違う。
現在、彼女が発して居る気から推測すると……。
いや、そんな事よりも、
「なぁ、ハルヒ」
再び、印象よりは遙かに小さな背中を呼び止める俺。その言葉に立ち止まる彼女。
しかし、彼女が振り返る前に、
「あの時に言ったように、オマエさんはここに来てから初めて出来た友達」
せやから、何か困った事があったら俺を呼べ。必ず駆けつけられるとは言わないけど、それでも出来る限りオマエさんの元に駆けつけて来るようにするから。
最早、俺本人の気持ちなのか、それとも、かつて俺で有った存在が伝える事が出来なかった言葉なのか判りませんが、それでも今の気持ちをそのまま言葉にする俺。
その言葉の最初の部分を振り向く最中に右の耳から、最後の部分は正面から受け取る彼女。その瞬間、彼女のやや短めのスカートが真円を描き、性格的な意味から言うと俺の好みの女性からは遠くかけ離れている彼女の特徴の中で、唯一の好みの部分と合致する長い黒髪が揺れた。
しかし――
「何を言うのかと思ったら、そんなくだらない事が言いたかったの?」
揺れた髪。そして、同じように揺れた心を隠すように傲然とそう言い放つ彼女。彼女の心の揺れが理解出来ない人間からすると傲岸不遜としか表現出来ない態度及び口調としか感じられない状態。
「あんたが何時、あたしの友達になったって言うのよ」
あんたなんか、あたしの下僕その一で十分よ。
何と言うか、かなりアレな言い様のハルヒ。ただ、そう言う言葉が返って来る事は初めから想定済み。故に、別に腹も立たない。
そして、ビシッと言う擬音付きの仕草で俺を指差す彼女。それはまるで敵は本能寺にあり、……と腹を括った時の明智光秀か、桶狭間に奇襲を掛ける寸前の織田信長か、と言う雰囲気。
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