第6章 流されて異界
第103話 試験直前
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の気を放ちつつある彼女に対してそう言う俺。
それに、あの時の不気味な液体は、別に彼女が飲めと強要した物でもありませんでしたから。
哀しそうな……。暗さと、無音が耳に響く室内の状況からなのか、初めて無以外の表情を俺に見せて居るように感じる長門さん。確かに、今までも無の中に別の感情が見える――。俺には感じる事が出来た事は有ります。
……が、しかし、
「朝倉涼子の話をわたしが最後まで聞いて置けばあなたが倒れる事はなかった」
誰から見ても、これは哀しげな表情だ、……と判る表情を見せるのは、今回が初めてだったと思うのですが。
ただ、
「それは結果論やな」
何時までも横になったままで彼女に対するのは流石に失礼……と言うか、俺自身が布団に座ったトコロで、現在のふたりが置かれている状況から、微妙な気分に成るのは変わらないのですが。
それでも、
「それに、朝倉涼子の話を最後まで聞いて居なかったと言うのなら、それは俺も同じ」
左頬に当てられた彼女の右手をそっと外し、長門さんの正面に相対す形で正座する俺。但し、俺のそんな気休めのような言葉で、生真面目な彼女を慰められる訳はなく――
「長門さんに俺が居るように、朝倉涼子にも誰か……。彼女に気を補充出来る存在が傍に居る事に気付くべきだった」
何故、俺が水晶宮関係で長門さんの御目付け役に選ばれているのか、その辺りが謎なのですが……。普通に考えると、少なくとも同性の相手が選ばれるのが普通だと思うのですが、その辺りは無視するとして、長門さんに御目付け役が居るのなら、朝倉さんにも同じような役割の人間が傍に居るはず。
そして、それは――
「朝倉涼子の従姉と言うのは、天野瑞希さんの事やな?」
俺が朝倉涼子作成の健康茶を呷る直前に聞いた朝倉さんのモノマネは、俺の知って居る瑞希さんの口調。そして、朝倉涼子の立場で彼女の傍に居て不自然でない相手を考えると、今年の四月から女子大生に成る瑞希さんならばかなり融通が利く。
更に彼女は俺と同じ式神使いで、何より彼女の傍には……。
俺と同じ龍種……と言うか、神代からずっと生き残って来た河川の主、龍神ソノが居る。もっとも、今はその姿を黒猫の姿に擬態していますが。
そう、従姉の飼い猫とは間違いなくその龍神の事。それで、そいつが朝倉さんの作ったお茶を一滴嘗め取っただけで寝込んで仕舞ったと言う事は……。
「朝倉さんに悪気はなかったから、俺が倒れるのは長門さんには想定不可能。因って、今回は誰にも落ち度はなかった」
ただ、今回の事件は悪意のない相手を利用すれば、俺を一度は毒殺をする事が可能……だと言う事の現れだとも思いますが。
もっとも、一度や二度、状態が死
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