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或る短かな後日談
終わった世界で
三 楔
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「っ、は、ぁ……」

 彼の体。刀を握ったままの腕は、弾けた断面、外気に晒して。私は、再び。捨てた、二丁の銃へと。彼等へとその、銃口を向けるため。手を、伸ばせば。よろめく足、撃ち抜かれて、赤い、赤い、血溜りへ落ち。
 肉片となった。たった今、私がこの手で解体した。彼の傍ら、床に伏し、転がって。痛みは無く。只々、自分の体を失った喪失感に包まれ。包まれても尚、這いずり、這いずり。落ちた彼の軍帽、その傍ら。転がる銃へと。手を伸ばして。

「……ま、だ……」






 戦わなければならない。こんな、彼等の後日談など終わらせて。彼女と共に、まだ、先へ。進まなければならないというのに。

 転がっている暇なんて。私には――


「あなたもさ。放っておくと、無理ばかりするよね」


 伸ばした手、銃を掴み。思うように動かない足、無理やりに。立とうとすれば。
 周りから響く発砲音など、聞こえないとでも言うように。私へと向けて撃ち出された、銃弾なんて気にも留めず。私を抱き締め、小さく笑う。彼女の姿がそこにあって。私を庇い、銃弾を受けても、怯むことさえなく。只々、私を抱き締めた彼女の一瞥に彼等は恐れ、慄くように、動きを止めて。
 私の髪、彼女の髪。冷たい体でも、温もりは伝わり。強く、強く。けれども優しく。彼女の腕に、抱き締められて。

「終わらせるんでしょう? こんな物語。一緒に」

 笑みに。守りたいと、思った彼女の笑みに。今、こうして、守られながら。
 笑みで、返す。私の手の中には、銃。そして、何より。こうして、共に在り続けてくれる。彼女が、居て。

「……ありがとう。そう、一緒に」

 終わらせよう、と。言葉を、返して。私は。銃と共に、彼の軍帽。私には少しだけ大きなそれを拾い上げて、頭に乗せて。

 血の海に立つ。彼女の傍ら、構えた銃。鋭く尖った爪の輝き、それが、空を駆けると共に。


 動く屍、誰かの悪意に手繰られた。書き加えられた。彼等の後日談を、私達の後日談を終わらせるために。


 彼等へと向けて。引き金を、引いた。



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