終わった世界で
三 楔
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えのある。私の知っている戦闘服を着た、兵士達の姿。顔を無機質なマスクで隠し。片手には銃を。もう片腕は切り取られ、一振りの刃を繋がれた。
彼等の着た服は。確かに、私が生きていた頃。戦闘時に着用した物。共に生きた。共に戦った彼等もまた。そう、私は、寮に居て。共に学んだ。励まし合いもした。皆、皆の姿、顔を覆うマスクの下には、きっと、記憶に残る。名前は、思い出せない。思い出すことも出来ないけれど、実際に見れば。話をすれば、きっと。きっと。思い出すに違いない――
「……リティ。下がってていい。無理しないで」
頬を。彼女の、手の甲。爪で、傷付けないようにと優しく。そっと、撫でられて。
見れば、その手は。僅かに濡れた。
「あ……」
手を。自分の手で、自分の頬に。顔に触れれば。液体の感触、指を濡らし。それは、確かに。私の目から零れ落ちた。
「大丈夫だから。すぐに終わらせる……だから、待ってて」
彼女は、責めることも無く、優しい笑顔を浮かべ、そう言い。彼女は。
一人。彼等の元へ――
「……リティ……?」
彼女の手を。強く、握り締める。
彼女の姿が。また。あの時のそれ。あの子の影に重なって。
あの時も。私が、あの子の手を掴めたならば。今だって三人で、一緒に歩んでいられた。この体になってからの記憶。あの子を失った悔恨。この体になる前の記憶。仲間達と共に過ごした思い出。手を握り締めることが出来たのならば。もっと強く、手を握り合うことが出来ていたならば。
蘇る記憶、記憶、記憶のカケラ。手をつなぐ記憶。それは、今と、過去、そして、もっと奥深くに在る。朧な記憶を重ね、重ねて。
彼女の片手を。更に、強く。二つの手で、決して離れないようにと握り直して。
「駄目……駄目。お願い。これ以上……」
これ以上。戦って欲しくない。壊れて欲しくない。壊して欲しくない。離れて欲しくない。彼女も。彼等も。私の記憶に残る全てを。大切なものを。
彼女の目を見る。困惑の表情、躊躇い。兵士達の足音が聞こえる。でも、私は。私は、彼女の瞳を見詰めたまま。彼女も、また。私と視線を交したまま。互い、互いに、動くことなんて、出来ずに。
自分が。どうしようもないこと。無理なこと。馬鹿げたことを言っているのは分かっている。分かっていても。どうすればいいのか分からない。いや。分かってる。分かってはいるのだ。銃を構えて。彼等へと向け。引き金を引いて、今までのアンデッド達と同じように。
壊せばいい。壊したくない。壊さなければならない。
彼女に。壊してもらえばいい。でも、それも、それも。
「いや……」
思わず。言葉を零し。零したところで何も。何も変わらなくて。
「……リ
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