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HURRY UP!
第一章
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は自転車で十分位だ。はっきり言ってすぐだ。それでも異様に長く感じる。とにかく早く駅まで辿り着かないと、と思って仕方がない。
 駅が見えてきた。脚がさらに速くなる。そうしてだ。
 駐輪場に入って自転車を止めて鍵を抜いて。その鍵を財布の中に入れてそれから駅に駆け込む。定期を通してそれからホームに向かう。
「よし、今日も間に合ったな」
 時間を見たら電車が来る五分前だ。実は間に合ったどころじゃない。
 それでも僕にとっては間に合ったと言っていい状況だった。心の問題だ。
 列車の二両目が来る場所に立ってだ。扉は三番目だ。
 そこに来ないと一日がはじまらない。他の人から見たらどうでもいいことでもだ。
 そこに立って電車を待つ。電車が来るのを待つ。
 やっと来た。待ちかねた。電車がホームに入るのをじっと見ている・
 それが来てだった。停まるのを心待ちにして。停まってから扉が左右に開かれるまでがとても長かった。開くとすぐに中に入る。心が勇んでいるのが自分でもわかる。
 そして中にいる、目の前の席に座っている彼女をちらりと見る。背が高くてはっきりとした大きな目で髪は豊かでそれを茶色煮してショートにしている。顔付きは背が高いのに可愛い感じで鼻が高い。制服は隣の高校のものだ。その娘をだ。
 彼女を知らないふりをして見る。たったそれだけ。それだけだけれど僕は彼女を見て心の中で微笑んだ。そしてだった。
 それから学校に向かう。彼女のことは隣の学校ってことしかわからない。他のことは全然だ。名前さえもわからない。言葉を交わすあてもない。

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