二十三章
武田勢の出陣と長尾勢の行軍
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」
「了解だぜ!」
「後備え、内藤昌秀!兵の口を賄え!飢えさせることまかりならん!」
「全力を尽くします」
「右翼、一門衆筆頭、武田典厩信繁!機を見て、敏に動け!」
「任せやがれです!」
「左翼、高坂弾正昌信!此度は本陣警護ではなく、戦場にてその知勇を存分に振るえ!」
「御意なのら!」
「中備え本陣、不肖ながら拙、馬場美濃守信房が承った。お屋形様、薫様、ご存分にお使いくださいませ」
「よろしくね、春日!」
「・・・・・・・」
春日の言葉にも、光璃は口をつぐんだまま。それを認めるかのように、小さくこくりと首を縦に振るだけだった。
「これにて陣立ては済んだ。・・・・先手大将!」
「応!」
「世に天に!武田の勇を打ち立てぃ!」
「うぇい!野郎ども、旗たてろーぃ!」
荒々しい粉雪の声に青い空に翻るのは、武田信玄を象徴するに相応しい、孫子の一文から抜き出した十四文字の文言だった。
「武田が指物風林火山!あたいら赤備えが川中島に風火を起こす!野郎ども、あたいについてくるんだぜ!お屋形様ぁ!」
「・・・・・・」
粉雪の言葉に小さく頷いた光璃が、ようやく一歩を踏み出した。一歩が踏みしめられた時には、粉雪の巻き起こした風火は林のように静まった。口を開く時には、辺りは山のように動かずにまるでが停まったかのように静寂が支配する。
「御旗、楯無も御照覧あれ。長尾の手より一真を守り、駿府から鬼を追い払う。それを武田の宿願とする」
「先手山県、出陣せぃ!」
再び風のように迅速に巻き起こす風のように起こる歓声と、火のような熱気を撒き散らしながら、武田の勇将たちが、躑躅ヶ崎館を出立していく。そして武田が出陣をしている間に長尾勢は川中島を目指していた。
「相変わらず遠いっすねー。川中島」
「武田はウチより遠いんだから文句言わないの。宇佐美の代わりに城に残っても良かったのよ?」
宇佐美定満・・・・上杉四天王と呼ばれる内の一人。景虎の片腕を務めるも、高齢のため隠居状態だったりする。
「えー・・・・留守番は勘弁っす」
「妻女山までもうすぐ」
「それでも行軍速度は歩きでも向こうの方が早いんですから・・・・やはり越後も、もっと街道を整備するべきでしょうね」
「よそはよそ、ウチはウチ。・・・・そういうのは、身内の平定が終わってからよ」
「・・・・グダグダじゃな」
「日の本中をグダグダにしてる人に言われたくないわ」
「・・・・先の戦は余のせいではないわ。余も迷惑しておる」
「親の因果が子に報い・・・・」
「百年も前の事など知ったことか」
「・・・・足利の家祖・源義康様よりは随分と近いように思いますが
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