二十二章 幕間劇
陽だまりスケッチ
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してくれてるから大丈夫だってば。それに、一真隊の皆や桜花さんが言ってたよ。上の者はどーんと構えて、下が心配しないようにしっかり構えておけばいいんだって」
「そうしてどーんと構えやがるのは、姉上の仕事でやがりますよ・・・・」
「夕霧お姉ちゃんだって一門衆の筆頭でしょ?石見たちを心配させちゃダメだよ」
「一門衆は別に夕霧の部隊ではないでやがりますよー」
「ほら、動いちゃダメだってばー」
「あぅぅ・・・・・」
とまあそんな会話を聞いていたが、ようやく出れそうな場面になったので薫たちの方に行ってみる俺。
「やっているやっている」
「お兄ちゃん!」
「あ、兄上・・・・・!」
そこにいたのは床几に堂々と腰掛けている夕霧と、その前に腰を下ろして、スケッチブックを筆で絵を描いている薫だった。モデルをするのなら、夕霧も逃げたりしないだろうな。
「薫も絵を描くのか」
「うん。あんまり上手じゃないけど、絵を描くのは好きだよ」
「あんまりじゃなくて、充分上手だよ」
「えへへ。ありがとー!」
「うぅ・・・・兄上、あんまり見ないで欲しいでやがりますよ」
描いている薫ではなく、夕霧が恥ずかしがっているんだろうか。
「本当は色も付けられればいいんだろうけど、こういう所で使うのはちょっと大変だから」
「色?色ならすぐに付けられるんじゃないのか?」
「そうだよ。貝殻や花から取った色の粉を、膠で練るの。その言い草だと見た事ない?」
「ないな。俺らのはすぐに色を付けられる道具が一式揃っているからな」
この時代はまだ色鉛筆とかチューブ入りの絵の具はないからな。まああとで貸してやるつもりだけど。
「へえーそうなんだ。時間もかかるから今日はこっちなの、甲斐ではあんまり手に入らない道具だから」
これは完全に薫の作戦勝ちだな。ずーと動いていなければ、強制的に休んでいられるし。
「夕霧お姉ちゃんの絵ってなかなか描く機会がないから、ちょうど良かったよ」
「機会がないねぇ。いつも一緒にいるのに?」
「躑躅ヶ崎館にはいるけど、夕霧お姉ちゃん、じっとしてないでしょ?」
「そういうことか」
「夕霧はこういうのは落ち着かないから苦手でやがりますよ・・・・」
「おいおい。魚みたいに動くのをやめたら死ぬみたいな感覚ではあるまい」
「何だから背中がむずむずするでやがります・・・・」
大人しくじっとしているのがマジで苦手なんだろうと、顔で分かる。座ったまま、小さな身体をもじもじと動いているが。モデルなので動かない様にしているのは、薫が頼んでやっていることなんだろうけど。姉としての責任と落ち着きのない困った顔をしている夕霧は、実の妹のようで可愛らし
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