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不器用に笑わないで
第六章
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第六章

「それは」
「あっ、手帳に取ってたんだ」
「大事だと思ってまして」
 だからだというのである。
「それでなんですけれど」
「しっかりしてるじゃない」
 今度は大輔の方が戸惑っていた。そんな彼女にだ。
「案外」
「そうですか?」
「そうだよ、それじゃあ今日は何かあるの?」
「特にないです」
 そうだというのである。
「今日は」
「わかったよ。じゃあね」
「どうするんですか?」
「これ終わったらあの喫茶店行こうよ」
 また笑って話す彼だった。
「ブルーライオンね」
「あのお店ですか」
「今日は部活休みだし」
 自分の事情も話した。
「だからさ、行こうよ」
「はい」
 その言葉に静かに頷く妙だった。こうして二人はまたあの喫茶店に向かうのだった。
 ブルーライオンでは整った顔立ちの女がカウンターにいた。そしてクールな面持ちで二人を迎えるのだった。
「いらっしゃい」
「ああ、暫くだったかな」
「そうね」
 大輔と美人がこんなやり取りをした。
「最近はどうしたの?」
「少し忙しくてさ。こっちも文化祭でね」
「それでだったの」
「そっちは最近どう?」
 彼は美人に気さくに話す。隣に妙を置いてそのスカイブルーの店の中に入りながら。
「北乃と高山は元気?今同じクラスだったよね」
「二人共元気にやってるわよ」
 ここで美人は微笑んで彼に述べてきた。
「相変わらずね」
「じゃあ相変わらず彼氏とかは」
「明日夢には彼女ができたわ」
 美人は悪戯っぽく笑って彼に述べた。
「そっちがね」
「ああ、そっちに目覚めたんだ」
「周りはそんなこと言ってるわ」
 美人はまた笑って話した。
「勿論真実はあれだけれどね」
「やれやれ、何か三人共相変わらずみたいだね」
「あんたはどうなの?」
 美人は今度は大輔に問うてきた。
「最近は」
「だから文化祭の準備で忙しいんだよ」
 またこのことを話すのだった。話しながら美人が今いるカウンターに近い席に向かう。そのうえで話を続けるのであった。
「だから最近この店にも来られなかったし」
「それじゃあそっちの娘は」
「パートナーだよ」
 こう彼女に話した。
「同じ実行委員のね」
「そう、パートナーね」
「はじめまして」
 妙は彼女に対してぺこりと頭を下げた。その手を前にしてだ。
「奈良橋妙です」
「奈良橋さんね」
 彼女の言葉を受けたうえで。美女は自分の名前を名乗るのだった。
「安橋よ」
「安橋さんですか」
「安橋恵美っていうのよ」
 微笑んで答えた。その微笑みもまた実に整ったものであった。
 そして微笑みをそのままに。大輔を左手の親指で指し示して述べた。
「これとは中学が同じだったのよ」
「おい、これかよ」

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