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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
43.無知なる神意
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意の暁《オリスブラッド》”が戦い合う
増設人工島
(
サブフロート
)
へと向けて“オシアナス・グレイヴU”を向かわせる。
近づくにつれてその魔力は徐々に強さを増していき、肌がピリピリとしてくる。
「それでいつまで隠れているつもりカナ?」
甲板の上にいたヴァトラーは、何もない虚空へと話しかけた。
すると薄明るくなりだした空の一部が陽炎のように揺らめき出した。
揺らめく陽炎は徐々に人間の形を形成していく。漆黒のローブを顔まで覆い尽くしている。
「オマエヲ行カセルワケニハイカナイ」
マスクでもつけているのかくぐもったような声が聞こえてくる。
ローブが右手をわずかに動かした。すると何かが激突したかのような衝撃が船を襲い停止する。
「面白い術を使うみたいだネ。少しは退屈しなさそうだ」
ディミトリエ・ヴァトラーが愉しむような笑みを浮かべて、瞳を赤く燃やすのだった。
彩斗はなんともいえない気持ちを抱えたまま家へとたどり着いた。
それは柚木が残した最後の言葉がどうも引っかかるからだ。あそこまで忠告する意味がわからない。
夜に外出する気は基本ないが、そんなこと忠告する必要性がない。
「……なんなんだろうな?」
「ほうひはの
彩斗
(
はいほ
)
くん?」
夕食のパスタを口いっぱいに頬張るながら唯が訊いてくる。
「口のもん飲み込んでから喋れよな」
フォークにパスタを巻きつけながら妹の行儀の悪さを注意する。
ムッとした顔をしたかと思うと口をもぐもぐさせて口の中のパスタを飲み込む。
「それでどうしたの、彩斗くん?」
「いや、柚木の野郎が別れ際に変なことを言うから気になってな」
「彩斗くん、柚木ちゃんになにしたの?」
「なんもしてねぇよ」
なんでまず最初に彩斗が何かしたかを疑われるのか問いただしたかったが、口で勝てないとわかった途端に拳が飛んできそうなのでやめておこう。
唯は華奢な身体ながら武術の達人だ。だから彩斗が喧嘩で勝てるわけもない。
「そういや、母さんの姿を見ねぇけどどっか行ったのか?」
「うん。なんか用事があるとか言って出かけちゃった」
フォークに巻きつけたパスタを口に運ぼうとした時、唯が何かを思い出したような声に手を止める。
「どうした?」
「そういえば、美鈴ちゃんが今日の夜は寒いから戸締りを絶対に忘れないようにだって」
その言葉に彩斗はわずかに引っかかった。普通の会話ではあった。しかしおかしいのだ。
ごく普通の家庭なら親が出かけるときに言うのは不思議なことではなかった。だが、美鈴がそんなことを言うなどというのは今までなかった気がする。
それはただ彩斗の前では言わなかっただけなのだ
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