暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
追憶の惨劇と契り篇
43.無知なる神意
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しだ。

「ようやく起きたんだ」

「ああ、腹も減ってきたしな」

 机に頬杖を突きながら隣の柚木を見る。太陽を目視したせいで謎の黒い点が無数に散りばめられてかなり見にくいが、呆れたような顔をしているのはわかった。

「睡眠欲の次は食欲なんだ。じゃあ次は性欲なわけね」

「んなわけねぇだろうが。てか、誰に欲情すんだよ」

 大きなあくびをしながら答える。

「そんなの決まてるじゃん」

 不敵な笑みを浮かべる柚木。とてつもなく嫌な予感がしたがその時にはもう遅かった。
 彩斗に見せつけるようにスカートの裾を持ち上げだしたのだ。眩しいほどに白い太ももが露わになる。
 顔が一気に紅潮し、熱くなるのを感じる。

「おまッ……!」

 大声を出そうになったのをギリギリで手で押さえこむ。

「本当に彩斗の反応は可愛いね」

 悪戯し終わった柚木は満足げな笑みを浮かべる。その笑顔さえも可愛らしく彩斗がさらに顔が紅潮していく。
 必死で赤くなった顔を冷まそうとする彩斗。それを見て面白がっている柚木。
 これが今の彩斗の日常だった。
 退屈することもなく程よい刺激のある楽しい日常。
 しかし歯車は動き続けている。刻一刻と歯車の数を増やし続けながらだ。
 それでも彩斗はこの日常が好きだったのだ。
 いや違った。
 彩斗は───




 いつもと変わらない寝室で叶瀬夏音は目を覚ましたのだった。
 緒河彩斗と一緒に暮らし始めてから約二十日が経過した。その間だけでも色々な出来事があった。
 暁古城が女性へと変わったり、黒いローブの男たちや錬金術師に襲われたり、ニーナ・アデラードが現れたりなど夏音がどれも理解できないことばかりだった。しかし、どれも彩斗が救ってくれた。護ってくれた。助けてくれた。
 そのどれもが夏音にできたことは少なくかった。
 そして彼はまた誰かのために戦っている。

「……彩斗さん」

 隣でいつもなら寝息を立てているはずの少年は今はいない。
 二人で寝るには少し狭いベッドのシーツを触る。わずかに彼の温もりが残っている。だが今にも消えそうなほどだった。
 夏音はじっとしていられずに彩斗の元へと向かおうとする。彼の位置はわかっている。
 遠くからかすかに感じる強力な魔力同士がぶつかり合っている。彼はそこにいると確信ができた。仮に違ったとしても何かしら関わっているであろう。

「どこへ行く気だ」

 ベッドから立ち上がろうとしたとき、後方からの声に夏音は振り返る。
 そこには、ベッドの上であぐらをかいて座っている人形サイズの女性がいた。大錬金術師ニーナ・アデラードだ。
 夏音が口を開こうする瞬間にニーナは遮る。

「大方、彩斗の元へと向かう気なのであろう」
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