終わった世界で
二 置き去り
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デッドを解体し次第拠点へ帰還せよ」
振り向くより先に。声と共に、音も無く。唐突過ぎる出現、何時現れたのか。私と、リティの間、中空に浮かび、移動する。機械の塊が進み出て。
跳び退き、私は、爪を。彼女は銃を向け。向けれど。
「止まれと言った。戦闘の中断を求める」
機械の塊……いや。離れてみれば、それは。体の大半を機械に置き換えた、少女で。人間としての原型を留めるのは、上半身のみ。その表情も、また。感情の一つさえ読み取れない。
そんな、彼女は。恐れることも。敵意を向けることも無く。只、私たちへと淡々と告げ。赤い光によって切断され、床に転がったマッドガッサーへ、もう一体のそれがガスを吹き掛け溶かす音にさえ意識を向けず。そのまま、伏したキメラの元へと降り立って。
「キメラは完全には解体されていない。間に合ったようだ。今回収する、安心していい」
誰へ。話し掛けているのか。彼女の目の前に横たわったキメラではない。誰かへの通信、僅かに。本の、僅かに。彼女の声も、柔らかく。キメラの体……腕を失い。随分と小さくなったその体を抱き上げ、浮上する。
「……私は、まだ……」
「運搬用リフトバイスと、雑兵以下のアンデッドしか与えられず。その上、交戦中にも限らず処分されようとした。その時点で察するべき」
彼女の腕の中。キメラは、沈黙して。
「帰還する。処理班、リフトバイスは私へ続け」
「待――」
投げ掛けた言葉は。彼女の耳に届いただろう。が。
彼女はやはり。音も立てずに、中空を滑り、線路の上へと飛び去って。
再び。動き始めたリフトバイス。鉄の箱の上へと乗り込んだ一体のマッドガッサー。来たときと同じように、あの、音を響かせ進む、それを引き連れ。
私の制止など。聞くことさえなく。取り残された私達を置き去りに。闇へと消えた。
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