終わった世界で
二 置き去り
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の。一人の少女の姿で。
「あ……そうだ、援軍だ、そうだろう、おい、何とか言えよ! おいッ! クソッ! 聞こえてんだろうが! こっちに来るな、来るなよッ!」
マッドガッサー。そう、呼ばれたアンデッドの内、一体が。リティの周りに群がっていたアンデッド達。彼等、彼女等へと向けて。腕に備えたノズルを向けて。
吐き出された。白い煙、白い霧。無機質な白い明かりの下、淡々と。只々、無感情に。死体の群へと吹き掛ければ。
崩れ落ちていく。崩れ落ちていく、亡者達。僅かに呻き、苦しむ素振りを見せながら。先までは確かに繋がっていた。部品を落とし、只の、只の肉へと戻り。
「……マト、気をつけて。あのガス」
皆までは言わず。触れたアンデッドの体を分解するガス。彼女の言った、処理班、とは。きっと、不要な死体を処理する為の……
もう一体のマッドガッサー。その、ノズルが。白いノズルが。遂に、此方へと向けられて。
「避けて!」
彼女の声。つい、先ほど。投げ付けられたアンデッドの群れを避けた時と丁度、同じように。二人、同時に跳び退いて。
違うのは。
「あっ……」
激しく損傷し。よろめいた、少女。キメラが一人、ノズルの向く先。取り残されたこと――
耳を劈く絶叫は。ノズルからそれが、白い霧が噴出される直前に。そして、その、彼女の声に。死体の群を処理した時のそれと同じように、淡々と。
私たちは既に、そのガスの届く範囲から離れてしまっているというのに。吹き掛けられた白いガス。死体を。粘菌を。アンデッドの肉体を壊死させ、分解し、解体する、そのガスを彼女、キメラへと向けて吐き出し続けて。
「どうして……目的は、初めから、私たちじゃない……?」
彼女の足が。彼女の体が。徐々に崩れ、徐々に落ち。造兵として作られたそれよりも遥かに強靭な彼女の体、しかし、それでも。少しずつ、確実に。蝕み、分解し、崩し。対する彼女は、血塗れの床その上をもがき、転がるばかりで。
「あ、あああああ……やめ、なんで、なんで、やめろ、嫌、なんで……」
もがく、もがく、その姿。崩れ落ちる身体。恐怖に歪んだ顔。目が、合い。
伝わるのは。誰かの悪意に焼かれながらも、私たちと同じように。生を求めた。最早、敵対者として彼女を見れず。憎しみなど湧かず。只々、憐憫、これ以上。傷付く姿を見たくない――
「やめ……」
彼女を、助けようと。助けたいと。駆け寄ろうと。
した、刹那。並び立つ私と、リティの間。走る、一本の光の線。一筋の赤い、光の線が。宙に浮かび。
多量の粘菌、噴出した赤。マッドガッサーの不恰好な体を貫き、そのまま、切り落とした。
「全員止まれ。キメラは私が回収する。処理班は残りのアン
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