終わった世界で
二 置き去り
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私の上、馬乗りに。腕を振り上げる、彼女の顔は。影に呑まれて、呑まれても。
窺える表情。それは、今までの。狂気に駆られた笑顔とは異なる。何処か、安堵の浮かんだ――
そして。その、顔のまま。彼女の腹に、大穴。貫いても尚、柱を穿った。その銃弾が。撃ち貫いて。
「――あ……?」
笑みは。驚愕に変わり。また、憤怒の表情へ。叫び声、言葉、聞き取れず。全身、赤に塗れ、塗れても尚、振り上げた腕。振り下ろそうとするその腕を。
私の腕、第三の腕。鋭利な爪を以て、切り落とした。
「あ……ッ……あああ、ああああああああッ!」
慟哭。風穴、腕を落とされ。私を壊さんとした、直前。浮かんだ安堵は、怒り狂い。歪み。今にも泣き出しそうな彼女、彼女を。
体を、蹴り飛ばし。私は。立ち上がり、見下ろして。
「何、何で、クソが、何で、もう少しで、クソ、死ね、死ねよ、クソッ!!」
虫の足、よろめきながら。立ち上がる彼女は、私の背よりも頭一つ低く。止め処無く溢れ出す涙を、血と、塵に塗れた床へ。瓦礫の上に落としながらも。
彼女は。震えるその尾。備えた鋭い針を、私へ向けて。
「……もう、止」
「煩いッ!」
彼女の戦意は消えず。寧ろ、先より強い敵意と共に。私へと、その。歪んだ体、歪められた体。備えた武器を、武器を向けて。
これ以上リティを一人にしたくない。これ以上キメラを傷付けたくない。そして、彼女に真実を問い詰めたい。しかし。
戦いは、終わらず。湧き上がり、止めることの出来ない焦りに駆られる。駆られる私の、耳に届いた。
何かの音。トンネルの奥。重く硬い、複数の何かが地面を叩く――奇妙な足音。その、近付く足音を聞いて。
「何……援軍……?」
キメラは、私の呟きを拾い。彼女もまた、近付くその、音に気付いて。しかし。
その顔に浮かぶのは。困惑のそれで。
私と、キメラと。数体、残り。死に切らなかった残骸が地面を覆った。その肉の絨毯を半ば、掻き分けるように私に近付く、リティも。一つ残ったリフトバイスまでもがまた、静かに。
近付く音、反響。不気味な足音。その主の、姿を隠した闇を見詰める。
「……マト」
不安げな声、視線を交し。
暗い、暗い。只管に続き、線路を飲み込む深い闇、湛えたトンネル、その奥から。
薄明かりの中へと這い出す、複数の鉄足。鉄足の運ぶ鉄の箱。その上に乗った、白いガスマスク、奇妙な防護服を纏った。二体のアンデッドは。ホームへと降り立ち。
「マッドガッサー……なんで……なんで処理班が……まだ、終わってなんか……」
青褪める顔。現れたアンデッド、その姿を見て。腕を失くし、腹を撃ち抜かれ。うろたえる姿は。
最早、怪物のそれではない。只
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