終わった世界で
二 置き去り
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がく音。
「っ、本ッ当ッ! 悪趣味!」
彼女が吠え、苛立ちを隠そうともせずに。二体の機械へと、同時に二つの銃口を向ける。
投げ付ける前、最初に見たときから薄々、気付いてはいたけれど。私もやはり、良い気はしない。
最早、それらに知能は殆ど残っていないとは言え。動く死体の群を投げ付けられるというのは。
「あはっ……もう慣れっこでしょ? ゾンビだとか、そういうの」
知らない声が地下に響く。鼓膜を震わす。それは、先まで私たちの居たトンネルの奥、暗闇から。徐々に光の中へと這い出す、二つの光、それから発せられた。
「……お前は。まともに口が利けるのね」
「何? お喋り出来る奴なら今までだって居たでしょう? オラクルちゃんとかさあ」
笑い、笑い、笑い。その笑い声は反響し、幾つもの声、まるで、囲まれたように。それが、それが。
耳障りで。不安さえ憶えるほどに、耳障りで。
「怖い顔しないでよ。笑っちゃうから……さっ」
トンネルから這い出し。駅のホームへと掛けられたその足は、虫のそれに似た。蠢く尾の先には針。指の先から伸びた爪は鋭く。背に生やしたのは、左右非対称の翼……否。片方には、破れた皮膜。もう片方には、皮膜すら備えていない人間の腕。それは丁度、私の備えた余分な腕と同じように……
「っ……」
人間離れしたその姿。そして。彼女の顔、角を生やした。笑みに歪めた彼女の顔は。
私のそれと。酷く似ていて。
「マト……?」
リティの声。それは。現れた異形、私に似た。彼女を見て。やはり、私たちの前に立つそれは。私に似た。瓜二つの。
浮かぶ記憶は、連なる何か。それは、鎖、鎖、繋がった。そう、私たちは。一つの鎖。あの場所に繋がれ、私たち自身もまた、互いに繋がった。朧で、断片的で。最早、崩れ落ちた後の記憶。カケラとなってしまった記憶が、記憶が、蘇って。
奥底から刺すように痛み喚く頭を抑え。抑えながらも、目の前に立つ彼女を睨み。彼女は敵。向けられた悪意。壊さなければ壊される。睨みながらも、彼女のことを。蘇った記憶の欠片を。もっと知りたいと。全て教えて欲しいと。願い、願ってしまって。
アンデッドの群を運んできた機械が、器用に。二本のアームで体を支え、そのキャタピラでホームへ這い上がる。リティは、二丁の拳銃を構えたまま。対峙する敵は、只。ニヤニヤと笑い、笑うだけで。
このまま行動を起こさなくても。よろめくアンデッド達は私たちに襲い掛かるだろう。二体の機体も、また。死体の群を掴むように、躊躇い無く。私たちを握りつぶすことだろう、と。
その前に。彼女へと、言葉を投げる。
「少しだけ、聞いておきたい」
「止まりな、リフトバイス」
異形の少女が、
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