終わった世界で
二 置き去り
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か残っていないのであれば、例え。行き着く先が分からずとも、進むしかなくて。
「……このまま、あの場所に続いているとよいのだけれど」
彼女の呟き。表情は見えず、けれど。先の見えない暗がりの中だからだろうか、少し、不安げで。
「……続いてる。きっと」
洞窟の中では、声が響き。自ずと声は、囁くように。隣を歩む相手にだけ聞こえる程度のそれとなって。
小さな声。小さな声。しかし、それでも。何処かから響く、ぽつりぽつりと雫の落ちる。その音に掻き消されないよう。その呟きを拾い、言葉を返して。
「……そうね。きっと」
先よりも柔らかな声。微かに響いたその声に、私も。無意識の内に強張っていた体、緊張が緩み。
いつかは。この暗闇にも終わりが来る。光が差す時が来る。そう、信じて。
信じた、先。
「リティ」
「何、マト――」
「伏せて」
彼女の体を抱き締めるように。出来うる限り覆い、隠すと同時に、風を切る音。微かに鼓膜を揺らした、人間のそれとは違う足音。聞いた途端に響いたその音だけを頼りに、暗闇へと向け、爪を振るえば。硬い、硬い。何かを叩いて。
暗闇の中。浮かぶ、二つの光。光り輝く目。嗤うように細められ、また。悪意の光を灯して此方を見詰め、闇に呑まれた。
直後。洞窟の先、明るく。私たちを誘うように、明かりが灯って。
「走るよ。掴まってて」
「な、何、敵!?」
「何か居る。灯りが点いたみたいだから、其処まで走る」
言うが早いか。彼女の体を抱き上げ、包み。二本の獣足に力を込めて。
再び聞こえた風切り音を置き去りにして、地面を蹴る。
「明かり、って、マト、罠よ!」
「分かってる。でも、他に」
取るべき行動も、思いつかない。と。言葉にする、前に。
私たちは。暗闇を、抜けた。
広い空間。灯る灯る明かりは白く冷たく。光の中へと飛び込むや否や、無機質な駆動音、線路の先。走り来る歪な機械は、しかし、何処か生物のそれに似た動きで。備えた二本のアームに何かを握り、キャタピラを轟かせて線路を走る、走り来る……勢いを殺すことなく。私たちを轢き殺さんと走り来るそれを避け、私の目線より頭一つほど低い段差の上へと跳び乗って。
見れば、向かい側の線路にも。同じ機体。二つの機械に挟まれ、並ぶ柱と柱の間。敵のアームの届かない場所へ、リティを降ろした。
「駅の、ホームね。ありがと、助かったわ」
「いい。それより」
「そうね、今は」
彼女とは、別の方向へ。二体の機械が私たちへと向けて無造作に投げつけたそれを避け。
聞こえたのは。別の方向へと跳び退いた彼女の、小さな悲鳴。投げつけられたそれが、硬い床にぶつかり幾らか砕けたそれ等が蠢く音、も
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