終わった世界で
二 置き去り
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に触れてみれば、なるほど、眉間に寄った皺、歪んだ顔。解すのは後にするとして、まずは。
彼女に。ごめんと一言、言葉を零して、頭を掻く。どうも、恨みばかりに駆られ……それだけの理由が在るとは言え……向かう先に居るであろう敵が私達へと向けるそれと同じ。悪意に駆られてばかりいる。
これでは。私の滅するべき奴と、そう変わらない。そんな存在にまで、私は。堕ちたくない。
言葉も少なく。警戒は怠らず。砂に飲まれた街。半壊したビル郡、それらも疎らに。もしかすると、この先に見えるあの場所……敵の潜むであろうあの場所まで、昔は一続きの街だったのかもしれない、と。砂の下に埋まるのは、かつての街、大戦の中で破壊され尽くした。その上を歩んでいるのかも知れない、と。
今、この世界しか知らない私達にとっては。壊れていないビル、普通の人々、きっと、草木や花も並ぶ。そんな景色は想像することこそ出来ても、見ることの叶わないものであるけれど。
「……それにしても」
遠く、遠く。一向に近付く気配の無いその地。建築物も随分と少なくなり。その建築物も、砂に塗れ。昨夜の雨、油に濡れた。徹底的に破壊し尽くされ、砂漠に飲まれたその地を歩き。
見通しは良く、目立った敵の影も無い。只管に続く砂、砂、砂の海。波立つ砂丘、僅かに顔を覗かせる文明の残骸。傷付きながらもまだ、形を残した建築も、幾らか。右手に見えるのは地下鉄への入り口か。砂に埋もれることなく開かれた口は、明かりの消えた地下へと続き。なんとなく、見覚えの在る景色を見れど、それ以上。記憶が蘇るといったことも無く。只々、静かに。足音以外の音も無く。昨夜の戦闘も、銃声も。爪と爪が風を切る音も、壊れた少女のうわ言も。全て、嘘だったかのように。これから向かう先は死地であることは理解しつつも、今、その旅路は。不思議と、静かで。穏やかな……
辿り着かなければよいのに、と。零れかけた言葉を飲み込み。胸の奥へと押し込んだ。
これから向かう先に居るのは。憎むべき相手、仇。奴を倒さないことには、平穏なんて。訪れることは決して無い、と。倒してしまえば。私たちは晴れて、自由の身。それまでは。
一刻も早く、ネクロマンサーを倒すことだけ。それだけを只考えよう、と。つい、泣き言を漏らしてしまいそうになる自分を戒め。言い聞かせ。私の足が僅かに、砂に沈み。また、踏み出す様。繰り返し繰り返し。沈み、浮かび、砂を落とし、踏み出してはまた砂に沈む。私の足へと、そして、隣を進む彼女の足へと。獣の足へと視線を落として。
「あれ、何だろう。リティにも見える?」
その、足の持ち主の言葉に、半ば跳ね上がるように前を見る。警戒を怠ったこと、彼女だけに任せ切りにしてしまっていたことを反省しつつ、目を凝らせば。
「鳥の群、かな」
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