第2部 風のアルビオン
第1章 秘密の小舟
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あった。
「全く、かよわい女1人閉じ込めるのにこの物々しさはどうなのかしらね?」
苦々しげに呟く。
それからフーケは自分を捕まえた男の事を思い出した。
「まさかあれほどの実力とはね…過小評価していたわ」
片手でゴーレムの拳を受け止め、圧倒的な攻撃力でゴーレムを消し飛ばす。
あまつさえ『破壊の剣』を使いこなし、倒してのけた。
虚とは皆あんなに強いのか?
しかし、今となってはもう関係のないことだ。
とりあえず寝ようと思い、フーケは目を瞑ったが、すぐにパチリと開いた。
投獄された監獄が並んだ階の上から、誰かが降りてくる足音が聞こえる。
かつ、こつ、という音の中に、ガシャガシャと拍車の音が混じっている。
何者だろう?
階上に控える牢番なら、足音に拍車の音が混じる訳がない。
フーケはベッドの上から身を起こした。
鉄格子の向こうに、長身の黒マントを纏った人物が現れた。
仮面に顔が覆われて顔が見えないが、マントの中から長い魔法の杖が突き出ている。
どうやらメイジのようだ。
フーケは鼻を鳴らした。
「おや!こんな夜更けにお客さんなんて、珍しいわね」
マントの人物は、鉄格子の向こうに立ったまま、フーケを値踏みするかのように黙り込む。
「おあいにく。見ての通り、ここには客人をもてなすような気の利いたものはございませんの。でもまあ、茶のみ話をしに来たって顔じゃありませんわね」
黒マントの男が、口を開いた。
「『土くれ』だな?」
「誰がつけたか知らないけど、確かにそう呼ばれているわ」
男は両手を広げて、敵意のない事を示した。
「話をしに来た」
「話?」
怪訝な声でフーケは言った。
「弁護でもしてくれるっていうの?物好きね」
「なんなら弁護してやっても構わんが?マチルダ・オブ・サウスゴータ」
フーケの顔が蒼白になった。
それは、かつて捨てた、いや、捨てることを強いられた貴族の名であった。
その名を知るものは、もうこの世にはないはずであった。
「あんた何者?」
平静を装ったが無理だった。
「再びアルビオンに仕える気はないかね?マチルダ」
「まさか!父を殺し、家名を奪った王家に仕える気なんかさらさらないわ!」
いつもの冷たい態度をかなぐり捨てて、怒鳴った。
「勘違いするな。何もアルビオンの王家に仕えろと言っているわけではない。近いうちにアルビオンの王家は倒れる」
「どういうこと?」
「革命さ。無能な王家は潰れる。そして、我々有能な貴族が政を行うのだ」
「でも、あんたはトリステインの貴族じゃないの。アルビオンの革命とやらに、何の関係があるって
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