第2部 風のアルビオン
第1章 秘密の小舟
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してたの?」
幼いルイズは慌てて顔を隠した。
みっともないところを憧れの人に見られてしまったので、恥ずかしかった。
「今日はきみのお父上に呼ばれたのさ。あの話のことでね」
「まあ!」
ルイズはさらに頬を染めて、俯いた。
「いけない人ですわ。子爵さまは……」
「ルイズ。僕の小さなルイズ。君は僕のことが嫌いかい?」
おどけた調子で、子爵が言った。
夢の中のルイズは、首を振った。
「いえ、そんなことはありませんわ。でも……わたし、まだ小さいし、よくわかりませんわ」
ルイズははにかんで言った。
帽子の下の顔が、にっこりと笑った。
そして、手をそっと差し伸べてくる。
「子爵様……」
「ミ・レディ。手を貸してあげよう。ほら、掴まって。もうじき晩餐会が始まるよ」
「でも……」
「また怒られたんだね?安心しなさい。僕からお父上にとりなしてあげよう」
島の岸辺から小舟に向かって手が差し伸べられる。
大きな手…憧れの手。
ルイズは頷いて、立ち上がり、その手を握ろうとした。
そのとき、目の前が真っ白になる。
眩しくて目を閉じる。
しかし、目を開けたとき、目の前には見慣れた天井が広がっていた。
少しボーッとする。
「夢か……」
ルイズは目を擦りながら上半身を起こす。
ウルキオラが座っているであろう椅子に目線を移す。
しかし、ウルキオラは居なかった。
「居ない…」
まだ寝ぼけているようである。
椅子を見る。
やっぱり居ない。
そして、目が覚める。
「ど、どこいったのよ!あいつ〜!」
ルイズは毛布を身体に巻きつける。
まだ、2時間ほどは寝ていられる。
しかし、ルイズはウルキオラが気になり、部屋を飛び出した。
ルイズの部屋の椅子に座っている男がいる。
彼はロウソクの灯りで本を読んでいる。
それは、オスマンから貰った『鬼道全集』という本である。
これは本来、死神が扱うものである。
しかし、ウルキオラは破面…それもヴァストローデ級である。
彼の中には死神の力も混ざっている。
そのため、死神のものである『鬼道』を扱うことも可能なのだ。
ウルキオラは読んでいた本を閉じる。
そして、スクッと立ち上がる。
壁に立てかけたデルフリンガーが、そんなウルキオラの様子に気づき、声をかけた。
「どうした?相棒」
ウルキオラは振り向くと、小さな声で言った。
「外に出る。お前も来るか?」
「おうよ」
ウルキオラはデルフリンガーを掴み、背中に掛けた。
『鬼道全集』を片手に部屋を後にした。
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