2ndA‘s編
第十三話〜孵化〜
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。
ピンポイントで放たれたその砲撃の色は見覚えのある桜色であった。
視線が今の狙撃手を探しそうになるが、フリーズしかけていた思考がそれを咎める。知っているのに確かめる意味はないと。
ライは再び身体に喝を入れると今度こそ跳躍する。未だに瓦礫に向けて魔法を放つ蛇で編まれた卵に自らの右手を突き入れようと、渾身の力を注ぐ。
目と鼻の先に迫っていた蛇の卵に右手は簡単に突き刺さる。
「これで!」
当初の考え通り、ライは夜天の書に対してクラッキングを開始しようとする。
だが、それは――――
「……え?」
蛇で編まれていた卵が解け、中からマネキンのような人の形をした何かが生まれたことで実行することができなかった。
蛇が解けたことで自分との接触点がなくなり、ライは自由落下を始める。
突然起こった予想外のできことにライの思考は一瞬フラットになる。しかし、それが戦場でどれほどの致命打になるのかをライは思い出すことができなかった。
「あ、アクセ―――」
離脱の為に始動キーを口にしようとするが、それは強引に止められる。目の前にいたマネキンのような人型の手がライの口を塞ぐように掴んだのだから。
万力のような力で頬を掴み、口を塞がれたライは痛みから来る悲鳴を上げることもできなかった。
そして更にライはあることに気付く。その人型のもう一方の腕にあるものが装着されていることに。
“ソレ”は一見すれば甲虫類が人の腕に引っ付いているように見える。だが、手首から肘にかけて覆う程の虫が人の腕に引っ付いていればそれは異様な光景だろう。そして“ソレ”は腕に装着されていることから武器であることを自己主張してくる。紺色の装甲に白のラインが入り、そして全体を貫くようにして一本の赤い槍のような棒が付いている。
質量兵器を禁止していない地球でもある意味で珍しいその武器の総称は、パイルバンカーである。
そしてその虫のような武器が夜天の書の防衛プログラムであり、幾つもの世界を滅ぼしてきた存在――――ナハトヴァールであることを今のライは知る由もなかった。
(まず――――)
無防備な自分が片腕で掴まれている今の状態が不味いことは、誰が見ても明らかであった。
人型の足元にベルカの魔法陣が展開される。生憎とライの視点からは丁度、人型の腕に遮られようになっていた為に見えなかったが。
一瞬の浮遊感を覚えると視界が一変する。自分の口を抑える腕や目の前の人型の存在は変わらなかったが、確かにそこは海鳴市に隣接する海の上空であった。
そして今なおバリアジャケットすら展開できないライを掴む理由があるとすればそれは――――
『対象ノ捕縛完了。排除開始』
追撃である。
ナハトヴァールが装着されている腕を腹部に当
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