2ndA‘s編
第十三話〜孵化〜
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波の中に突っ込むような光景。この光景を傍から見た人が居れば、その人は確実にライの撃墜、又は消滅を幻視するのは確実であった。
そんな絶望的な中でも、ライは宙を駆け続ける。その瞳は微細な動揺すらも浮かべることなく、魔力の輝きの向こうにある蛇の塊の更に向こう―――夜天の書へと向けていた。
『振動検知、来ます』
簡潔な報告に戦場では不謹慎なことではあると理解しているが、ライは不敵な笑みを漏らした。
ライが笑みをこぼしてから即座に変化はやってきた。
視界を横から埋めるように“大きなモノ”が遮ってくる。それは先ほどライが魔力弾を打ち込んだビルであった。
ライが仕掛ける数分前に彼はある仕込みを行っていた。それは、今倒壊してきているビルにある物を設置することである。そのある物とは、蒼月の格納領域にしまってあった予備のカートリッジである。
今現在、格納領域の肥やしであったそれをライはビルの要所に設置することで、デモリッションを行う上での爆薬として利用した。そしてその起爆のためにライは魔力弾を打ち込んだのである。
自分の考え通りに倒れるように調整するのに本来であれば、かなり綿密かつ微細な調整が必要になるのだが、蒼月のセンサー類から得たデータと持ち前の知識で何とかそれをカバーする事にライは成功した。
(逃走目的の知識が役に立つなんて)
元の世界でバベルタワーの倒壊等、ルルーシュが建築物を爆破する事をよく手段としていたのを理由に、ライも彼からいくらかそれについての知識を教わっていたのだ。
元来なら、逃走やかく乱の為の手段をしかし、ライは活路を切り開くための布石に使う。
「アクセル」
倒壊と同時に自壊し始め、土埃と瓦礫が降り注ぐ。それはライの事前の仕込みの結果である。
夜天の書と自身に向かってくる瓦礫の群れ。その一つを足場にするためにライは相対速度を合わせるように加速魔法を発動させた。
靴底を擦り付け、スキール音と摩擦熱を残しながら彼は瓦礫の一つに着地する。
(ビルとビルの隙間に飛び込むだけで追撃を中止したのなら、僕を隠すようにすれば)
先程までライの方に向いていた攻撃魔法の壁は、今現在夜天の書に降り注ぐ瓦礫の迎撃に向けられていた。
これがライにとっての唯一の活路であった。
夜天の書から逃走する際、ライはあっさりと姿を隠すだけで逃げ出すことができた事に疑問を抱いた。結局原因は推論の域を出なかったが、夜天の書の行動原理として『視認可能な範囲内に居る脅威対象を攻撃する』というものである。
そもそも広域殲滅魔法をしようできるのであれば、敵性個体が存在する時点で街ごと吹き飛ばせば書の安全は確保できるのだ。
ある意味で極論であるが、それをしなかったということは夜天の書が自らに何らかの交戦
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