第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
26.Jury:『Necromancer』U
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るで夢遊病か催眠術で操られているかのような、無気力な瞳がこちらを見た。
「チ────」
「ん────あ……?」
偃月刀を投げ棄て、その目の前で柏手を鳴らす、『解呪』のルーンを刻んだ掌で。それにより、正気を取り戻した涙子が、短く呻いて。
「あふ……ふぁぁ〜……おはよう、初春……」
「いや、違うから。嚆矢君だから」
等と、欠伸を漏らしながら気の抜けた言葉を。ともすれば、『本当に寝ていただけなのではないか』と危惧しそうな程に。
「こうじ……嚆矢……ファッ!? つ、対馬さん?! ど、どうしてここに!?」
「それは此方の台詞だって、佐天ちゃん? こんな時間にこんな場所で、何してんだか」
「こんな場所って……あれ、私、言われた通りに病院の薬を飲んで……どうして、こんなところに?」
「だからそれ、此方の台詞だって」
先ずは泡食った涙子だが、言われて辺りを見回して……首を傾げる。よくよく見れば、パジャマ姿。
あからさまな異常事態であろう。こんな姿で、彼女の住む寮から歩いてきたなどと。
「兎に角、寮まで送ってくよ。ほら、これ着て」
「うっ……す、すみません」
黒のロングコートを彼女の肩に掛けてやり、スーツ姿で笑い掛ける。通常ならば、こんな蒸す夏夜にそんな厚着をしている人間などいないと気付くのだろうが。今の涙子は、理解が追い付いていないようであるが。
「まぁ……取り敢えずは────」
『てけり・り。てけり・り!』
その笑顔のまま、影に潜むショゴスの警告とルーンの警告が続く。危機感に従い、振り向きながら伸ばした右腕で────飛んできた火の玉を、合気により右斜め上に投げ逸らす。
「ッ……熱ィな、クソッ!」
前後の闇、そこから歩み出す者達。現れたのは二人、若い女二人。制服から、どちらも長点上機学園の学生らしい。ふらふらと、先程の涙子と同じ様子。しかし、一つだけ違うところがある。
「お、おォォォォォ……」
「ウぅウぅぅぅぅウ……」
虚ろな、などと生易しい話ではない。死んだ魚そのものの、濁りきり腐りきった瞳。肌もまた、屍蝋の如き蒼白。そして──呻き声を漏らすだけの、意思の欠片すらない表情。どう控えめに見ても話が通じる訳はないし、そもそも────生きていないと、ショゴスの感覚器と嚆矢の勘の二つが同じ結論を出した。単純だ、呼吸も体温もない人間が生きているはずはない。
だと言うのに、意思表示はハッキリと。差し出された片方の右手には炎を、もう片方は周りのゴミやら何やらの当たれば洒落にならない物を浮かせている。明確な、敵対行動を。
──発火能力……否、|火炎放射《ファ
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