浅葱 夢
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感情が先行し、メールの文面を確認する。
そこには、こう記されていた。
『今からそっち行っても良い?』
何の思惑があって来るのか分からないが、それを確認するためにも了承の返事を出した明人は身支度をする。
寝癖をなおして、洗顔と歯磨きもして、寝間着から普段着に着替えて。
後用意すべきものは、浅葱を迎え入れるための度量。気持ちの問題だけ。
昨日の発言をそのまま解釈するならば。
浅葱には好きな男が居る。しかもそれは、自分には思いつかない人間らしい。
異性の目を惹くほどの美人とスタイルの浅葱と釣り合う程の男。
強いのか、優しいのか、それとも別の要因があって。分からないまま時間が過ぎていき―――30分後。
浅葱が来訪する報せが音となって響き、即座に玄関へ向かう。
「来たか、浅葱。」
「悪いわね朝早くに。」
こんな時間に来たことに対する謝罪を述べる浅葱を迎え入れようとドアを開けっ放しにしているのだが、彼女は一向に入ってこない。
否、入室する代わりに彼女は何かを差し出してきた。
「これを渡したかったのよ、誰よりも早くに。」
それは、可愛らしい小包。
誰かにプレゼントする時用の、赤を基調とし白の斑点模様が散りばめられた小包だ。
何故自分に、それを向けているのだろうか。
なんて疑問は、湧かなかった。
古城のように、呆れ果てるような鈍感さを、明人は持っていない。
けれどその行為を信じきれずに、戸惑っていた。
「……待て浅葱。このプレゼントって。」
だから、確信が欲しくて彼女に問い掛けた。
「言ったでしょう?」
その問いに、浅葱は微笑みながら即答した。
「貴方は知っているけれど、思い当たらない人間だって。それは本人、明人のことよ。」
にわかには、信じ難い事だ。
正直これは、夢なのではないかと疑っている自分が居る。
疑心に揺れる明人は困惑の色を隠せずにいた。
しかし彼女は彼の手を引き、小包を強引に持たせる。
「……ほら、自分の事って一番分からないもんでしょう。」
「そりゃ、そうだろうさ。嬉しいよ、俺にプレゼントだなんて。」
「ふふっ、良かった。……ねぇ明人。」
「なんだよ、あ―――」
彼女の呼び掛けに、応じようとした言葉は出なかった。
それは彼女によって、唇を塞がれたから。
彼女とキスをしているから。
見開いた瞳が、ほんのりと赤く染まった彼女の表情を見る。
そん
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