浅葱 夢
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人さん。貴方に足りないものは、臆さない事です。任務実行時の、普段の勢いの良さを恋愛面でも発揮すればよいんですよ。何でこう、私生活では弛んでいるんですか?」
「姫柊、俺はな。ヘタレなんだよ。惚れた相手にはな、どうしても怖くて一歩踏み込めないんだ。敵ならな、大丈夫なんだけど。」
弱弱しく吐き捨てる少年は、声色通り諦念の呟きを漏らしていた。
「相手に向けたこの感情が一方通行でしか無くて、迷惑だと陰で思われていたら。そう思うようになったのは幼少期からだ。まだ獅子王機関に預けられるまでの俺は、餓鬼の頃から両親の喧嘩の光景ばかりを見て育ってきたんだ。」
愛を育めば、いずれ破綻するのだろうか。
結婚しても、永遠に思いあう事は出来ないのだろうか。
恋をしても。
ぶつかり合ってしまうのか。傷つけあうのか。
だったら自分は、恋愛なんか恐くできない。
「そんな思いが、今の俺の恋愛観なんだ。だから姫柊、お前は……俺みたいにヘタレず、今まで通り頑張れや。」
「明人さん……。でも、もしかしたら。」
―――それ以上は言えなかった。
姫柊は、口を噛み締めるように噤んで明人を心配そうに見詰める。
もしかしたら、藍羽先輩だって貴方の事を好きなのかもしれないのに。
そんな無責任な発言が、出来る訳が無かったのだから。
確かに彼らの事情も心情も、総てを把握できるわけではない。
そんな瞳があるのなら、姫柊はもっと早く色々な事に行使している。
だから。
第三者はただ、助言したり、見守ったりすることだけしか出来ないのだ。
余計な手出し口出しして、相手の気持ちを考えずに勝手な行動すれば、それこそ迷惑な話だ。
だから、せめて。
応援したい気持ちだけでも。姫柊はそう思って。
「……先輩。ご飯、早く食べましょう。冷えますよ。」
「……そう、だな。」
―――こうして、明人にとっての衝撃の一日が終わりを遂げた。
翌朝、朝五時。
ブーッ、と。携帯電話の振動で明人は目を覚ます。
姫柊は別の部屋で眠っているため、おそらくはまだ起きていないだろう。
静かに起きて、呻きつつ携帯電話を見やる。
どうやらメールの様だ。
それを理解した明人は頭を掻きつつ携帯電話に手を伸ばす。
「誰だこんな時間に。迷惑メールか?」
なんてぼやきながら、着信相手を確認する。
その画面には、『藍羽浅葱』と記されていた。
「っ!?」
思わず目を見開かせて、驚愕のあまり飛び上がり眠気が吹き飛んだ。
何でこんな朝早くに彼女からのメールが、なんて考えが過ったが。
そんな思考よりも
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