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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
序章
03話 黄泉還り
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ないと思ってはいた。だが生きたいと思っていただろうか―――

 いや、俺は死に場所を探していた、どうすれば一番気持ちよく死ねるかを探していた。
 だが、そんな人間には安らかに眠る資格すらない。

 生と死は表裏一体、コインの表裏でしかない。
 どう死ぬかというのは、どう生きるかという事でもある。????俺は機械的に責務を果たすだけで、真剣には生きてはいなかった。

 そうするしかなかった?
 そんなのは言い訳にすらならない。


「良いだろう――俺は此処に来るには幾分早すぎたようだ。」
「うん、私はずっとここで待ってるから―――頑張って。」

「ああ、お前にそう云われれば応えん訳にはいかんな。」

 骸が向ける漆黒の剣を執る。そして、来た道へと踵を返す。
 逆風が顔に叩きつけられる。
 眼球が頭蓋にめり込みそうな程に強力な暴風だ―――しかし、向き合った為か泣き声はより鮮明に聞こえてくる。

 今征こう―――己は黄泉比良坂(よもつひらさか)を死に向かう圧力に逆らい駆け出した。



『―――隊長、我々の誰もが貴方こそが真の武士であると……今でもそう思っています。』

 風の狭間で声が聞こえてくる。
 斯衛の多くが下級武家の子女を徴収し、武御雷とそれを駆る精鋭を育成するまでの繋として子供らを使い捨てにし、更に薬物や催眠暗示を使い物にするための臨床データを得るためのモルモットとして扱った。

 そして、京都大火の折にはそんな彼女らを帝国軍・米軍・国連軍の三軍とシコリを残すと見捨てた政威大将軍。

 格式と伝統に胡坐を掻き、自らに仕える武士たちを貴き責務と、死を美化して闇雲に死地に追いやるだけ。
 事なかれ主義の下、責任を取りたくない責任者たちが溢れる国と武家。

 本当に剣を捧げるべきモノなのかと多くの斯衛の衛士は疑問を感じ始めていた。武家の長で在るはずの将軍が率先して兵をモルモットにし、見捨てたのだ。

 そして、そんな使い捨てられた者たちを辱め物にするマスコミと大衆に評論家ども――――腐っている、斯の国の何処に本当の武士がいるッ!!!この国の何処に忠を尽くす価値があるっ!?
 そんな憤りが己たち前線の斯衛たちにはあった。


『隊長、我々は貴方が自分で真の武士として胸を張り、誉れある武人としての最期を迎え、我らの死を無碍に為さらない事を望みます――――』

「ああ、承知した――俺は剣と心してこの人生を戦い抜こう。」


 遥か死の彼方へと消え逝く声に、俺はそう答えた。

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