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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
序章
03話 黄泉還り
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 俺のような人間としての欠陥品の兄を持ち苦労させた。しかし、立派に柾の家を守ってくれるだろう。

 だが、武士に成れなかったという残念が一抹の未練となる。


『ならば何故―――』

 喋ることなど無い筈の骸が喋った。


『お前の手はそんなにも固く、握りしめられている。』


 言われてはじめて気づく。
 自分の拳が流血が滴るほどに握りしめられているという事に。

 赤が零れて屍の道に染み込んでゆく。
 ―――ああ、自分は斯の黄泉路に聞こえてくる泣き声を耳にひどく憤っている。

 何故だろう、こんなにも心がざわつくのは
 何故だろう、こんなにも心が波立つのは
 何故だろう、こんなにも心が逸るのは

 こんな声を聴きながらでは……死んでも死にきれないではないか!
 誰かの泣き声、誰かの叫び声
 そんなのは聞き飽きたはずだというのに―――何故、こうも心が荒ぶる。

 そんなのは分かり切っている。
 この胸糞悪い感じはいけない、断じて許容できない!!
 腸が煮えくり返る、先ほど血の浅水を啜った時とは比べ物に成らないほどに熱くて堪らない。

 “征け”―――骸が再び剣を差し出す。命亡き眸でそう言っていた。

「???いや、それは俺ではないほかの誰かで十分だろ。俺である必要性がない。」
「君はそれでいいの?」

「???!!」

 骸の中に絶対に忘れられない女が居た。骨すら拾ってやれなかった彼女が死人の肌白さで其処にいた。

「此処でこっちに来たら、君は後悔し続ける。本当にそれでいいの?」
「誰かの泣き声なんか、もう聞き飽きた。俺がどれだけ悲鳴を踏みにじってきたか……全てを救うことはできない、多くの人間を救う陰で少数には絶望を抱かせたよ。
 そんな俺が、たった一人のために動いていい理由はない……お前すら愛せなかった俺にはそんな資格はない。」

 大を救う為に小を切り捨てた、すべてを救えないながら最善を尽くした。だが、己が救わなかった、守らないと決めた人間がいたのは事実。
 見捨てた人間がいる以上、その死を背負わねばならない。貫き通さねばならない筋がある。道理がある。


「ううん、そんなことないよ。」
「………何?」

「私、幸せだったよ君にちゃんと愛してもらえて。死にたくないって思えながら死ねるのって本当はとっても幸福なことなんだって最期に教えてもらえた―――だから、君は未だこっちに来ちゃダメ。
 ………死にたくないって思えるようになってから、それがこっちに来るための最低条件。」

 彼女の気持ち、言葉が痛い。そうだ、いつも彼女はこちらの心を揺り動かす。

(俺は、死にたいと思っていたのだろうか……?)

 彼女の言葉に自分の心を初めて振り返る、死ね
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