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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
序章
03話 黄泉還り
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それは決して消えることない声。それはどんな存在であっても消せない声。
想いの限り、力の限り、存在の限りに訴えてくる。
―――剣を執り戦えと。
涙を止める為に、血を止める為に―――誰かを守る為に。
「―――俺に戦えと云うのか。」
骸たちが一様に首を縦に振った。
「執るに足らない“矜持と名付けただけの見栄”と、ただの強さだけを求める俺には其処までして戦う理由がない―――理由がないと闘えない。」
いつの間にか開いた古傷から血を絞り出すように口にしていた。
何時の頃からだろう――気づいてしまったのだ。
自分は決して武士には成れないと……武士とは守る為に戦うものだ。
信念、矜持、愛しき者、主君、誇り……その何かしらを守る為に戦う者こそが武士なのだ。
自分にある強さだけへの渇望では武士には成れないのだ。
そうだ、自分は武士という強者に憧れただけの偽物に過ぎないのだ。
だからこそ、口では幾ら言っても所詮己は修羅に過ぎず、武士ではない。
武士の偽物に過ぎないのだ。
本当に守るべき、己にとっての正義を欠く武士は武士じゃない。
そう、必要なのは己にとっての正義。大衆受けする耳触りのいい大義ではない。
真の強者とは、強者に憧れた時点で強者ではないのだ。
英雄になろうとしたものが英雄足りえないように、強者は強者になろうとしたものがたどり着ける物ではない。
−−−そして、正義はどれだけ探しても見つけることが出来なかった。
「俺は武士になりたかった。何かを護る為に戦う、その在り様が綺麗だったから憧れた!
だから走り続けた!強さを求め、武の頂を目指し続ければやがて、やがて何時か見付けられるんじゃないか……そんな幻想を信じて。
しかし、そんな紛い物では―――元より何を守るか、それすらも定まらない………!」
順序が逆だったのだ―――。
始めに守るべきものがあり、それを守る為に見合う強さと志を持つものが武士となるのだ。
自分には、その護るべき何かが無かった。
他者が己の武力・武術を賞賛しようともそれは全くの意味を持たず。
目的も無く、ただただ力を求め狂ったように修練を積み重ねる自分を周りの者はまるで修羅、剣鬼の様だと言った。
その評価に間違いはない。何しろ自分自身でそうだとしか判別が着かないのだから。
「結局、俺には見付けられなかった―――自分のすべてを賭して護りたいモノが。」
口惜しさが胸を占める。
絶望だ、己は死の最期にて未練が無かった――この世に執着を見いだせなかった。
だからこそ、現世に何の未練も執着も無い。
家の事は弟たちが何とかしてくれるだろう、皆俺よりも優秀な奴らだ。
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