第十三章 聖国の世界扉
エピローグ 狂気の王
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狂王と呼ばれる男が口にした化物との言葉。それは嫌悪と忌避を多分に含みながら、確かに恐怖と呼ばれるものもあった。苛立たしげに花を蹴りつけながら、ジョゼフはミョズニトニルンに背中を向けた。
「好きにしろ」
「はい」
これで話は終わりだとミョズニトニルンに背中を向け一人星を見上げていたが、何時までたっても動こうとしないミョズニトニルンにジョゼフは訝しげに問いかけた。
「……何だ?」
「―――何を……お考えでしたのかと」
「なにも―――……いや、そうだな……あの男のことを考えていた」
ミョズニトニルンの問いに反射的に否定の言葉をあげそうになったジョゼフだった、顎に手を当て口を閉じると、改めて口を開いた。
だが、その口から言葉が発せられる前に、ミョズニトニルン自身から応えた。
「……エミヤ―――シロウ」
「そうだ」
「……」
頷くジョゼフを見ながらミョズニトニルンは目を細める。瞳に映すのは、満開に咲く花々ではなく、一人の男の姿。何度も敵対した男である。だが、未だまともに正面から戦ったことはない。何故ならば、勝てないからだ。普通に考えれば、いくら強くとも敵は一人。無数の魔道具を使用できる自分ならば、人形等の大群により磨り潰し打ち破ることは不可能ではないはずであった。
だが、当初考えていそんな企みは、男の馬鹿げた戦力を目の当たりにしたことで霧散した。
バカ正直に正々堂々と戦って、三万の軍勢に打ち勝つような男をどうにかすること等不可能だ。だからこそ、ミョズニトニルンは様々な謀略と絡めてにより士郎を亡き者としようとした。
しかし、その効果は全くと言っていいほどない。
あいも変わらずあの男は今も生きている。
「…………っ」
湧き上がる屈辱と苛立ちに、眉間に皺を寄せるミョズニトニルンが、気を取り直すように小さく深呼吸しながら自分の主を再度見上げる―――が、
「ジョゼフ、さま?」
思わず、戸惑った声を上げてしまう。
背中越しに僅かに見えた主の横顔が、まるで―――泣いているかのように見えて。
「なんだ?」
「い、いえ……何でもありません」
こちらに向けられた主の顔には、何ら悲しみの色は見えず。勿論、その目に涙の姿はなかった。向けられる訝しげな視線から逃れるように、ミョズニトニルンは顔を伏せた。
「―――余のミューズよ……お前は―――」
「……何か?」
『お前は―――』の続きを待てれども来ないことから、ローブに隠された眉を曲げながらミョズニトニルンが問いかけてみる。
だが、ジョゼフは何も語らず、ただ黙し続けていた。
再度、尋ねようと、ミョズニトニルンが口を開こうとする、が。
「―――
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