第六章
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第六章
「そうじゃなきゃ面白くないでしょ」
「素直じゃねえな」
片桐は若菜の話を聞いてふとこう言った。
「何かな。そのままストレートにいっても」
「べ、別にいいじゃない」
そう言われてどういうわけか顔を赤らめさせてきた。
「貴方にそういうことするわけじゃないし」
「まあそうだけれどな」
そえでも片桐は言いたかった。
「そこんところは俺には関係ないし」
「だから黙っててね」
「わかったよ。じゃあ上手くやりなよ」
「あと一回なのよね」
「頑張りな。応援してるぜ」
「有り難う。それじゃあ」
「ああ」
二人は笑みを浮かべ合って別れた。何処か密約を思わせるような、そんな笑いを浮かべ合って。そして別れたのであった。
それから数日後。またしても若菜が剣道部に来た。また部活が終わった頃にであった。
(よし)
最初に彼女に気付いたのは片桐であった。その姿を認めて心の中で笑みを浮かべる。
(いよいよだな)
(ええ)
若菜と目で言葉を交える。そして健次郎に声をかけた。
「おい佐々木」
「はい」
丁度自分の防具をしまい終えた健次郎がそれに応えた。
「部室にもうどうしようもない小手あったよな」
「あれですか」
「ああ、あれリサイクル室に持ってけ。いいな」
「わかりました。じゃあ今から」
「おう、早くしろよ」
「はい」
「戸締りはまた頼むぞ」
「わかりました」
こうして健次郎は小手を持ってまたリサイクル室に向かう。廊下を歩きながら思う。
「最近何かとあそこに行くなあ」
と。あまり深くは思っていない。縁だろうと思っていた。
そんなことを思っているうちにそのリサイクル室に来た。そこにはもう先客がいた。
「いらっしゃい」
「いらっしゃいって」
そこにいたのは若菜であった。健次郎に顔を向けてにこにこと笑っている。
「会長もここに」
「ええ、用があってね」
笑みをたたえたままそう応えた。
「用って」
「ここに来ることよ」
「何か置きに来たんじゃなくて?」
「ええ、今日はね」
どうにも健次郎にはわからない言葉だった。眉を顰めさせて考えてしまう。
「何かよくわからないんですけど」
「すぐにわかるわ」
「はあ」
だがそれでもわからない。彼女が何を言っているのか。全くわかりはしない。
一方若菜の方はよくわかっているようである。健次郎を見てにこにこと笑い続けていた。彼にも声をかける。
「置くのよね、その小手」
「はい」
「じゃあすぐ置いて」
「わかりました。それじゃあ」
何かよくわからないままに促され小手を足下に置く。それで済んだ。
「これでいいんですよね」
「ええ・・・・・・」
ここで若菜の態度が一変した。
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