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或る皇国将校の回想録
第四部五将家の戦争
第五十四話 将軍閣下達の憂鬱
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次第、という事でよろしいでしょうか?」
 誰もが頷いて見せた。彼らにとっても悪い話ではない。どこもかしこも人手が足りなくなるだろうとは分りきっている。
「妥当でしょう。それまでは情勢を見極めるという事で」



皇紀五百六十八年 七月二十二日 午前第十刻
龍下ノ国 大喉 〈帝国〉東方辺境領鎮定軍本営


ユーリアは痛むコメカミを押さえて、目前の被害報告が突き付ける現実に苦労して向き合った。

「第21師団は・・・・再建まで最短で二ヶ月。
第三東方辺境領胸甲騎兵聯隊は壊滅、残存戦力は二個大隊弱。
騎兵師団も損害が二割近く」

目立った被害だけでも精神的にかなりクる。
更にこの後、再建予算の見積りも漏れなくついてくる。

 ――これ以上部隊を引き抜く事ができないとなると後備の動員も視野に入れる必要がある。万が一そうなったら更に軍事費が――ええぃ!まだ絶望にゴールしてたまるか!

 厭な未来を想起させる数字を振り払い、現実に対峙せんと気力を振り絞る。

「何より・・・・将官の三分の一が戦死、これは看過できるものではないわね」

「流石に動員で補いがつく類の問題ではありませんからな」
 メレンティンも真摯に頷いた。
「熟練した指揮官はどのような軍でも宝石より貴重なモノです。精兵を精兵たらしめるのは将校と下士官故に」

「分かっているわ。取り分け東方辺境領軍の骨子はそれだもの」
 練度の高い兵を率いた優秀な前線指揮官とそれを管制する将達。それは、軍隊の基本であり、莫大な予算と官僚達の苦労によってようやく創られたものである。
 この〈大協約〉世界、それも銃器の時代を受け入れた軍の中では異常な規模の精鋭軍である。
独自経済の脆弱さを考えるならば絶対君主制でなければ持ちえないもの程の軍である。

「――当面は本領からの増援に頼るしかないわね。本土に残った者から将校を見繕わないと。
第三東方辺境領胸甲騎兵聯隊の残余部隊は本営の護衛を務めた――」

「バルクホルン少佐でしょうか?」

「えぇ、彼を中佐に昇進させましょう、聯隊の再建まで聯隊長に仮任命します。
当分は軍司令部の直轄とし、再建に全力を注いでもらいましょう」

 メレンティンはそれを聞くと満足そうに頷いた。彼の見る限り、バルクホルンの手腕は見事なものであった。
 カミンスキィと能力の甲乙はつけ難いが、聯隊長としての適性を考えるのならば政治的野心を持っていない分、自分の神経に優しいバルクホルンの方に軍配が上がるのは当然であった。
 カミンスキィの後釜まで野心を抱くようでは最悪、聯隊の解体までも視野にいれていた。何しろ厄介極まりない事に、軍事的に妥当な野心を満たす成功例を残してしまった以上、第三東方辺境領胸甲騎兵聯隊長の座は単なる騎兵
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