第四部五将家の戦争
第五十四話 将軍閣下達の憂鬱
[1/8]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
皇紀五百六十八年 七月 十九日 午前第九刻
陸軍軍監本部 第二会議室 陸軍軍監本部 情報課次長 堂賀静成准将
「――ふむ」
現在の戦局と敵情を分析し、取り纏めた書類束を観ながら会議の副議長を務める事になった堂賀静成准将は顎を撫でながら面々を眺める。
戦務課は撤退とその後防衛計画の策定に〈帝国〉軍の龍兵対策に大わらわ、兵站課も損害の補充や防御計画にそった物資の輸送計画や水軍との連絡に忙殺されている。残留している部隊を掻き集めて〈皇国〉内地を分断する虎州の三大街道に防衛線を構築させながら第三軍と龍州軍・近衛総軍の受け入れの用意を整えなければならないのだ。
情報課も彼方此方から<帝国>軍の情報を掻き集めながら、〈帝国〉軍による龍州占領後の情報網を再構築しており暇ではない。
「――故に軍監本部として、後備の動員数を増やす為にも、早急に皇龍道・内王道を確保し、避難民を関州に受け容れる事を警保局に提案しました。
警保局は、〈大協約〉の保護規定にある都市への避難を想定しており。陸軍の支援を受けない限り計画の変更は不可能であると返答しております。戦務課としましては、主攻正面と予想される皇龍道の防衛に全力を注ぎ、集成第三軍、及び内王道防衛の任にあたる駒州鎮台を内務省の要請に応え、避難民の保護支援に当てる事を提案します」
一礼し、戦務課勤務の按田中佐が着席する。
龍州出身の衆民院議員と内務省の後押しで予算が下されたこの大疎開計画は、軍部も無視することはできない。関する報告を受け、議事に呼びつけられた他の参謀達も囁き合う。
「兵站課としては、皇龍道・内王道の防衛に必要な兵站の構築に全力を注がねばならない事を理解していただきたい。単なる後方連絡線の構築だけではない。
軍単位の築城作業や長期宿営に必要な設備の設営――取り分け、これらは雨期までに最低限の段階まで進捗しなければ、国防戦略が崩壊するだろうと、兵站課は考えている。
後方支援要員を引き抜いて充てる事は不可能だと想定してもらいたい」
原坂中佐が兵站課としての意見を述べる。護州閥の人間だが輜重将校として苦労を重ねただけあり、人としての評判はかの草浪中佐よりも高く、交渉役として護州閥の人間たちにも重宝されている。
情報課の尾島中佐が口を開く。
「情報課としては、戦務課の提案に異存はない。問題は後衛戦闘部隊が追撃を防ぎきれるかどうかだ、本領より十万――おおよそ三個師団規模と思われる増援が北領に集結している情報を既に各部署に回した筈だ。この兵力に押しつぶされて早々に後衛戦闘が不可能になったら話にならない。陸軍主力の転進に関する戦務課の展望を拝聴したいのだが」
「三日から四日程、泉川を根拠地とし、龍州軍・及び近衛総軍を後衛戦闘にあて、亢龍川において渡河点の防衛を行う。その間に第二
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ