≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その弐
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新される状況に俺の視線は追いつかない。せめてと思い≪聞き耳スキル≫を使用し全方位に飽和している聴覚情報を収集する。
「だ……だめだ、下がれ!! 全力で後ろに跳べ――――――ッ!!」
直後、その声、キリトの絶叫に重なりながら一つの巨大なソードスキルのサウンドエフェクトがイルファングの玉座に響いた。
――なんだ? どういう状況だ? イルファングが? タルワールじゃない? キリトの声? ……そうか、変更点か!
俺の思考が纏まり、定まらない視点をイルファングに集めようと動かす。動く視点の中、フゥーっと息を吐きながら集中力を高める。肺の息が少なくなるにつれ周囲の動きと音が鈍り、時間の進みが加速度的に遅くなる。そんな中で生まれた真下の足音に疑問を抱きながら、俺の視界は遂にイルファングを収めた。
そして、俺が二歩目を踏み出す前に――――大地が揺れた。
視界に入ったコボルド王は腰の武器――湾刀ではなく、形状的には日本刀に近い武器――を抜き、既に何かしらのソードスキルによって垂直に飛んでいた。空中でギリリと体を捻り不気味な関節音を鳴らしながら、武器に威力を溜める。日本刀の赤い光が段々と強くなりコボルド王の巨体が落下し二度目の地鳴りが起こる。同時に鮮血の色に輝く衝撃波のようなカタナが水平に三百六十度放たれる。その衝撃波がC隊全員に直撃し、血柱のようなエフェクトを高々と出現させた。
その、たったの一撃で、C隊の全員のHPが半分の注意域に染まった。そして弱った彼らの頭上には、ぐるぐると円を描いて回転する黄色い光点、それが示すのは、一時的行動不能状態――スタンしているという絶望的状況のことだけだった。
今までの知識を崩す規格外の威力と悪性状態付与だった。
イルファングの着地による二度目の振動の余韻が切れた瞬間、俺の両足は弾丸の如く最高時速で弾けた。不測の事態、C隊のピンチ、見たことのない武器、絶望的な静寂、恐怖、そして≪高揚≫が俺を突き動かした。風を切り駆けながら戦法を組み立てる。俺一人で戦う戦法を。
――俺一人で一本丸丸削るのは無理だ。できるのは精々時間稼ぎ、撤退までの時間稼ぎか。……いや、それを決めるのは俺じゃない。撤退か決戦か、それを決めるのは各々の意思だ。俺がすることは未来のための時間稼ぎ、今、未来を決めるのは俺ではない。俺は、俺のしたい事を、≪イルファング・ザ・コボルドロード≫との決闘を、ただやるだけだ。
静寂に包まれるイルファングの玉座にひとつの連続した足音のみが響き渡る。まるでサイレント映画の中に紛れ込んだかのような錯覚に陥りながらも遠くで硬直しているイルファングを目指し俊敏値を働かせる。だが、遠い。届かない。俺は
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