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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
闖入劇場
第百四幕 「泣きの一回使用済み」
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しているのではない。
――ただ、確認を取っているだけだ。
――汝は、当の昔に『人界の守護者』なのだから。
胸から立ち上った炎の中から、何かが見えた。
火。
土。
金。
水。
木。
五つの理を結び、之を五行とす。
其の器を強念にて充たし、廻し、力と成す――これを五行器とす。
嘗て、父が「家宝の一つだから」と渡してくれたペンダントに刻まれていた五芒星。
その五行を示す図形が、どくん、と脈打った。
そして、立ち上った炎が消えた時――鈴音は、気付く。
胸の奥にあるはずの心臓が、ない。
そして目の前の五行が、脈打つたび、身体に血が通う。
それを認めた鈴は、悟った。
『これが…………アタシの、心臓……?アタシ、アタシは――』
鈴の脳裏に、見たことがない筈の光景が浮かんでは消える。
離婚の事ばかりを考えてこちらに見向きもしない両親にかまってほしくて、わざと人ごみに紛れて乗った汽車。
自分なんていらない子なんだと呟きながら、一夏達に会いたいって口に出して、余計に虚しくなって。
それで、父親から貰ったペンダントを揺らしながら外を見ていた。
そして――影が。
『いや………』
轟音を立てて。
『いやぁ………!』
目に映ったのは。
『やめて……ねえ、やめて……!』
左胸を貫かれて、赤が。
『思い出したくない、思い出したくない、思い出したくない!!』
最後に助けを求めて握ったペンダントから、声が聞こえたんだ。
――汝、人界を守護する覚悟ありや?
「死にたくないよぉ……」
――今ではないいつか、その身を人界の守護に捧げる覚悟があるのならば。
「苦、しい。けほ、けほっ!」
苦しくて、血を吐き出して、アタシは死んじゃうんだって。
ひゅうひゅうと音を立てる喉と、震える指先。動かない体と焼けるような肺を動かして。
繋ぎとめていた意識の糸を手放す、最期の瞬間。
――汝の身体を借り、汝に今一度、命を与えよう。
「欲し、い」
――いずれ汝の強念が我を御するに相応しき力を持ったその時。
「助けて。たすけて。たすけ、て」
――真の守護者として、共に唱えよ。
「死ぬのはイヤ。いやぁ………」
それは運命か、不幸だったのか。
鈴は、唱えてしまった。
声が囁いたその呪文を、鈴は父から聞いたことがあったから。
――必神火帝、天魔降伏。
「必……神……火、帝……天魔、降伏………」
――麟王、合体。
「麟王、合体」
直後、鈴の視界は炎によってすべて埋め尽くされた。
ただ、その炎は敵を焼き払うような恐ろしさはなく。
母の腕に包まれるような柔らかな慈悲を感じるように。
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