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とらっぷ&だんじょん!
第二部 vs.にんげん!
第26話 おとなげ!
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何を考えてるんだ、君は! ディアスは病み上がりなんだぞ!」
 と、大きく肩を使って息を吸い、
「君は年齢の割に言動が子供っぽっすぎる!」
「いや、それお前にだけは言われたくないんだけど……」
 と、近くの建物の裏口が開き、路地に男が転がり出てきた。ウェルドはその男に見覚えがあった。煉獄探索で一緒になった事がある、元アスロイトの騎士だとかいう男だ。
 そんな事俺には関係ないだろう! と男が叫んだ。
 うるせえ! と、男を追いかけて出てきた二人組の男が箒で元騎士を叩き始める。
「アッチは止めに行かなくていいのかよ? 騎士サマよ?」
 アーサーが目になみならぬ光をためて黙り込むので、下らない事を言ってしまったと、ウェルドは後悔した。
「……なんかあったのか?」
「ウェルド、僕もさっきオイゲンさんから聞いたばかりだ。まだ真偽はわからない。でも、昨日町を出た人たちが……」
 アーサーは首を横に振る。
「いや、とにかく宿舎に戻ろう。話はそれからだ」
「言いかけたんなら最後まで言えよ」
「とにかくいろいろあったんだ! まずは宿舎に……」
 と、爆発音が聞こえ、新人冒険者の宿舎の屋根越しに、黒い煙が上がるのが見えた。
 ディアスがしみじみと言った
「現在進行形でいろいろあるようだな」

 エレアノールは一人、毒術師サディーヤの家を訪ねた。
 雪から逃れ、風のない暗い廊下にあがると、その暗がりに不死者ファトゥムが佇んでいた。緊張し、心拍があがるのを感じた。まだ幼さを残した顔つきと、枯れた老人の目。その対比が逃れがたい負の魅力を放っている。
「サディーヤなら奥だ」
 ファトゥムは歩きだし、エレアノールとすれ違った。
「……ありがとう」
 果たして奥の部屋で、戸に背中を向ける形で毒術師が立っていた。この町に来たばかりの頃、エレアノール達が持ちこんだラフメルの葉を薬に調合してくれた女だ。あの時ウェルドは照れくさがって一緒にこなかったが、以来、エレアノールはここで傷薬の類を調達することが多かった。
 膝の裏まで伸びた、波打つ濃紺の髪。垣間見えるうなじは褐色で、その肌の美しさが、サディーヤをより一層浮き世離れした存在に見せる。
 大きな目に暗い光を湛えて、サディーヤが振り向いた。薬を調合する道具を作業台に置いた。
 愛想笑いを浮かべても、纏った不幸の色が消えない。そんな女だ。
「何のご用でしょうか」
「アルバートさんとボスマンさんを探しにきました。こちらにいると聞いた」
 エレアノールが一礼して答えると、サディーヤは得心して頷いた。
「あのお二人でしたら、地下の温室に……」
 その言葉を証明するように、部屋の奥の戸の向こうから、男二人の大きな笑い声が近づいてくる。
「よう、エレアノールじゃないか」
 果たして姿を見せた
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