第二部 vs.にんげん!
第26話 おとなげ!
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なたは動ける状態では……」
男は首を横に振り、悲しみと倦怠で濁った目を、ウェルドに向けた。
「あの助司祭がちょっかい出して来やがったんだな。そうだろ」
「ああ……」
「凶戦士の兄ちゃんよ。俺はあんたが憎くて仕方がねえ。ここまでの怪我じゃなかったら一遍ボコボコにしてやりてえくらいだ」
「……」
「でもよ、そんな事したってティアラちゃんが喜ばねえ……」
「お願いですからベッドに……」
「言わせてくれ、ティアラちゃん」
ウェルドは緊張しながら男の目を見据えた。
「でもな、あんたは悪い奴じゃねえ。それはわかる。わかるんだ」
「……」
「……だからよ。俺はもうすぐ死ぬ。俺の代わりにティアラちゃんを守ってやってくれないか。バルデスさんの代わりによ……」
「そうするつもりだよ」
ウェルドは頷いた。
「約束する」
男は頷き返した。満足そうに部屋に戻る。
木戸が閉まると、入れ違いに誰かが教会と病院を隔てる戸を開けた。振り向いた。ディアスだった。
「迎えなど要らぬと言ったのに」
開口一番、彼は不満げに言った。
そのムスッとした表情を憎らしく思った。ちょっとでもこいつとまた会いたいと思った自分が馬鹿みたいだ。
ウェルドは後ろにディアスを連れて宿舎へと歩いた。いずれにしろ、選択は行われた。目を離さない事だ。ディアスの目的と本性を見極めなければならない。
「外界での件だが」
宿舎の前まで来てから、ディアスが背後から言った。ウェルドは立ち止まらずに振り向いた。
「んだよ?」
「遠慮して黙っているのなら、配慮は無用だ。柱の破壊と魔物出現の関係はわかっている」
「……」
「今回ばかりは感謝する。どうやら貴様の単純さに救われたようだな」
「あっそ、へぇ〜そいつは……」
ウェルドは路傍に積み上げられた雪を一掬い掌中に収め、
「どうも!」
腰をよじって振り返り、ディアスに投げつけた。
雪はディアスの顔面で弾けた。
「……貴様、何をする」
「てめぇは何か喋るならもっとマシな事喋りやがれ! 何だ、感謝するってよ」
「しなかったらっしなかったで文句を言うだろう、貴様は」
「うっせ、バーカ!」
「貴様に借りができたのは面白くないが……貰った物は返さなければなるまい」
と、ディアスの腕がサッと動き、まもなくカンカンに握りしめられた雪つぶてがウェルドの顔の右側に飛んできた。
「いってぇな、この野郎!!」
「返礼だ」
「俺がさっきぶつけたのこんな固くなかっただろうがっ!」
「返礼ついでだ、一つ良いことを教えてやろう」
「何だよ?」
「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せという言葉がある」
また雪つぶてが飛んできた。
痛かった。
ウェルドはキレた。
「てっめぇ、調子こいてんじゃねぇぞ!」
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