第二部 vs.にんげん!
第26話 おとなげ!
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で隔てられた厨房に向かった。いつも一番最後に起きてくる彼女のために、胡椒のスープと羊肉のパイが残されていた。
それを器に盛ってテーブルに戻るまでの間に考えが変わった。
「それかさあ、ちょっとアイツ驚かせてみない? なんかこう派手なことしてさ。バーンっていってパー、みたいな」
「ちょっと抽象的すぎるわね……。それならクラッカーを作ってみるのはどう?」
「なにそれ?」
「紙の筒の中に少しの火薬と紙吹雪を入れた余興用の小道具よ。筒の底に糸が通してあって、その糸を思いっきり引くと、摩擦熱で紙吹雪が飛び出すの。これならあなたの要求に添えると思うわ」
「ふーん。よくわかんないけど、おもしろそうじゃん! やろ、やろ」
「火薬が必要になるわね。クムラン先生に頼んだら分けてくださるかしら」
「そういう交渉なら任せてよ! もらえるだけもらってくるからさ」
ノエルは呆れ顔をした。
「……そんな大した交渉は必要ないと思うけど……」
約束通り、ウェルドは昼に教会に行った。併設の病院に入ると、ちょうどティアラが大部屋から廊下に出てきた。
「よう。今日も寒ぃな」
「ええ、こんにちは、ウェルドさん。寒さで体を壊さないようにお気をつけくださいね」
「そりゃこっちの台詞だぜ。大変だろうからな。風邪ひかんようにしろよ」
「ええ」
少しはにかんだように笑うティアラは、奥の階段から上がってくる足音で真顔になった。
助司祭カドモンと、お仲間の不良冒険者達だ。
「どけ!」
先頭の冒険者が、廊下の真ん中に立つティアラに肩をぶつけた。短い声を上げてよろめいたティアラを、ウェルドは両腕で支えた。
「何すんだよ!」
男達は酒の臭いと高らかな嘲笑を残し、廊下から姿を消した。
「……ったく、何て連中だよ。ティアラちゃん、大丈夫か?」
「えっ、ええ……」
ウェルドは男達が消えていった後の廊下を横目で睨んだ。
「あいつら、いい加減目に余るぜ。ティアラちゃんが一番大変だった時にさえ手伝いもしねぇで」
「……」
バルデスがあの体になってからだ……ウェルドは忸怩たる思いをかみしめた。この町は予想以上に平和だと、町に来たばかりの時は思っていた。冒険者同士の殺し合いが日常茶飯事の無法者の町だと聞いていたからだ。だがそれは、バルデスが事実上町の覇権を握ることで抑えられていただけの事だ。
そのバルデスの死が確定し、町が壊れ始めている。
「でもティアラちゃん、頼むからアイツらを自分一人で窘めようとか思うなよ。危険だから。なっ」
「……ですが……」
木戸が軋み、上半身を包帯で覆われた男が姿を現した。二度目の凶戦士出現によって重傷を負った男だった。
「ティアラちゃん……大丈夫か……」
男はか細い声で言った。
「! どうか横になってください! あ
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