第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第四章
その彼女がすぐにカクテルを作りはじめた。それがまた非常に手馴れた動きであった。
その動きで出されたのがソルティードッグだった。それを彼に差し出すのだった。
「どうぞ」
「ああ」
彼女の言葉に頷きそれを受け取る。そうして口をつける。
するとだった。その彼の横から声がしたのだった。
「ねえ」
「んっ!?」
「隣、いいかしら」
こう彼に声をかけてきたのである。
「よかったら」
「隣?いいよ」
「そう」
まずは顔を向けることなくかけた言葉だった。そのうえで声がした方、左に顔を向ける。するとそこに立っていたのは。女だった。
「んっ!?」
「はじめまして」
見れば赤く少し茶色がけた髪を波立たせて赤いドレスを着た美女だった。化粧は濃いめだが紅の唇と奇麗な目をした美女だった。その彼女が彼に声をかけてきたのである。
それを見た克己はすぐにわかった。その彼女が誰であるのかと。
だが今はそれは言わなかった。ただこう言うだけだった。
「それじゃあ横はね」
「ああ、座っていいさ」
こう彼女に答えるのだった。そしてこうも彼女に告げたのである。
「何考えてるんだ?」
「何って?」
「わからないと思ってるのかよ」
こう美女に言うのだった。その隣に座ってきた彼女にだ。
「それでな」
「ふふふ、やっぱりわかるのね」
「もう終わったのか?」
憮然として彼女に告げた言葉である。
「それでな」
「いいえ」
美女は微笑んで彼女に言葉を返した。美女はその間にバーテンダーにカクテルを頼むのだった。彼女が頼んだそのカクテルが何かというと。
「右の方と同じものを頂戴」
「ソルティードッグをですね」
「ええ、それよ」
まさにそれだというのである。
「それを頂戴」
「わかりました。それでは」
こうしてだった。そのソルティードッグが彼女にも差し出される。彼女はそれを手に取って口に含みながらそのうえで彼に対して言うのであった。
「まだよ」
「じゃあ何でここに来た」
「それをする為よ」
彼の問いにこう返してきたのである。
「その為にね」
「話がわからないな」
「その相手はここにいるのよ」
美女は今度はこんなことを言ってきた。
「ここにね」
「ここに!?」
「そうよ、ここにね」
微笑んだ声であった。
「いるのよ」
「ここに御前が知っている人間がいるのか」
「いるって言ったらどう思うかしら」
「信じられないな」
はっきりと答えた克己だった。何時しかカクテルを飲むその手は止まっていた。
「今の言葉はな」
「じゃあ言うわね」
「ああ」
「その相手は」
それが誰なのか。今遂に言うのだった。
「その人は私の横にいるわ」
「横にか」
「これでわかってく
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ