第拾壱話『偽りの恋人』
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、さすがに疲れた」
「ああ、かなり走ったからな」
お互い砂浜に座っている俺たち。
うん。夕焼けに染まる空と海、江ノ島もとてもきれいだ。
「逃げるのってやっぱイイな。楽だし、すげーしてやったりって感じ」
「逃げるが勝ちって言葉もあるからな」
「……知らなかった。最近ケンカがつまらないと思ってたけど……そっか、こんなやり方もあるんだな。ありがとな。ユウといると勉強になるわ」
「それはよかった」
そしてまた、二人で海を眺める。俺はふと愛の横顔を見るその顔はこの場にある海や空よりも綺麗だと思った。
「あとさ、ユウ。迷惑じゃないか?」
「迷惑?……なにが?」
俺の方を向きながら突然、愛が訪ねてくる。何のことについてなのか分からなかったので聞き返した。
「あ、アタシの嘘でも恋人だって言ったこと」
「ああ、そのことか。別に迷惑でも無ければ嫌でも無いよ。だって、俺……愛の事好きだし」
「!?」
ボンッ!という音と共に愛の顔が赤くなった。夕日のせいもあるのか余計に赤く見える。
だけど、そういう反応や顔がいちいち。
「可愛いって思うんだよな……これが」
「かわ……っ、か、か……バカかお前は!」
なぜか、怒られた。
「あ、アタシは辻堂愛だぞ」
「ああ。知ってるけど」
俺も名字辻堂だし、てか従兄だし。
「稲村仕切ってる身だし、ケンカ最強が代名詞なのにお前みたいなヤツが……なんて、合わねーし。そもそも、誰かと付き合う気なんてない。ンなことしたらナメられるだろ。それにアタシは湘南中に敵がいるからユウを危険な目に遭わせたくない」
後半は俺のことを心配してくれての事なのが嬉しい。
「でもあれだけ恋の前で堂々と言ったんだからせめて3会までは恋人のフリしとかないとな。バレたらバレたでメンドイぞ」
「あ、ああ。それは確かに…」
「……」
「……」
再び沈黙が生まれる。さてさて、どうしたものか…。
「あ、あのさ……」
最初に口を開いたのは愛だった。
「しばらくの間お願いしてもいいか?」
「ん?なにを?」
「その……恋人のふり…を…」
「ああ、任せろ」
「そっか……サンキュ」
安心したのかホッと胸をなで下ろす愛。
「んじゃ、そろそろ帰るか」
立ち上がり、言う。
「ああ、そうだな」
愛も後に続いて立ち上がる。
そして、二人並んで家路についた。
Side 辻堂愛
家に帰ってきて
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