暁 〜小説投稿サイト〜
FOOLのアルカニスト
悪党と鬼女
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
じゅうぶんにできるし、九十九針ももろくなった扉を吹き飛ばすぐらいの威力はあるというわけだ。

 実験室から出てみれば、周りは酷い有様だった。立っている人間は一人もいない。研究員のことごとくが昏倒している。

 「ぶっ殺してやりたいけど、そんな場合じゃない!とっとと逃げよう……いや、待てよ」

 殺しても飽き足らない下種ばかりだが、そこでふと思いつく。

 「ちょっと懐を確認。お、あったあった。これがないと出れないもんな、あと現金も必要だし」

 倒れ伏した研究員達の懐やポケットを探り、まずIDカードを確保し、次に財布からお札のみを抜き取っていく。泥棒もいいところだが、今は手段を選んでいられない。近所の警察では、桐条の手が回っている可能性が高いので、少しでもここから離れる必要があったからだ。

 流石、非合法研究所の所員というべきか、実に30万円近くの現金を回収できた。クレジットカード全盛の時代じゃないことに透真は心の底から感謝した。

 「よし、今度こそ逃げるか」

 まんまと現金をせしめた透真は、一目散に逃げた。研究所のエリアを抜け、孤児院へとつながる階段を昇り始めたところで、彼はありえるはずもない冷たい声を聞いた。

 「動くな。動けば撃つ」


 




 「動くな。動けば撃つ」

 照準を頭につけ冷酷に宣言しながらも、実のところ卜部は頭を抱えたかった。
 先の原因を調べるために急行してみれば、孤児院内の職員・孤児共に昏倒しているし、これ幸いと研究エリアへ向かってみれば、一人の少年が走ってきたというわけである。

 「(リャナンシー、この餓鬼が?)」

 「(はい、ウラベ様、この少年から先程の力と同質の気配を感じます。まず、間違いなくこの少年が原因かと)」

 小声で仲魔である鬼女に確認するが、答は一番あって欲しくないものだった。

 (やれやれ、面倒なことになったぜ……。)

 「貴方は誰ですか?なぜ俺の邪魔をするんですか?まさか……この研究所の人間……」

 卜部の心中をよそに、少年が口を開く。最後にいたっては子供とは思えない剣呑さと憎悪をにじませている。

 「勘違いするな。俺はここの小悪党どもとは違う本物の悪党さ」

 「そうですか。では邪魔しないでくれませんか。早くここから脱出しなかればいけないんです」

 「そうしてやりたいところではあるが、俺にも都合があってね。俺の質問に答えてもらおう。この施設を内の人間は尽くが昏倒している。これはお前の仕業か?」

 卜部とて、子供の使いではないのだ。はい、そうですかと通してやるわけにはいかない。まして相手は、あれ程の被害をもたらしたと思わしき相手だ。子供といえど容赦するわけにはいかなかった。

 「
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ