第5話 僕タチハ死ンデシマッタ
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ぱ明日宮君からでしょ」
心臓が凍りついた。
クグチは左端の男を凝視した。浅黒い肌の、背が高い男だった。男は困ったように、それでも満面の笑みで、頭をかいた。男は機材を凝視する。
そして呼んだ。
『クグチ』続けて、『それから、あさがお』
あさがお? あさがおって誰だ?
『まずは紹介かな。みんな、お父さんの仲間で友達だ。えー、向かって左から伊藤ケイタ君』
小柄な男が機材に向かってニコリとした。
『続けて強羅木ハジメ君と向坂ゴエイ君』
なるほど、強羅木は面影がある。よほど照れくさいのか、睨むような目をして、フイとよそを向いた。
『それから桑島メイミさん』
髪を団子状にまとめ、白衣を着た、清潔感のある女性だった。
『お前たちはまだ小さいけど、もし大きくなってからこれを見てるなら、俺は生きて日本に帰れなかったってことになるな』
胸が締めつけられるのを感じ、拳を握った。
「……親父」
『えー、その、もしその時は、クグチ、お前のことは桑島さんがご実家で面倒を見てくれると約束してくれた。桑島さんには妹がいてだな、そのまあ、妹さんはもうすぐ赤ちゃんが生まれる予定なんだ。無事元気な赤ちゃんが生まれたら……仲良くしてほしいと思ってる』
桑島メイミと視線を交わしあい、
『そしてあさがお、お父さんはお前のことが心配だし、不安で仕方がないけれど、お母さんを一人にしたくないっていう気持ちを最大限、尊重したい。何かあったらってことで手渡した桑島さんへの連絡先を使うことがないように、願っているよ』
まだ若い明日宮エイジは、じっと黙って言葉を選んだ。
『クグチ……大人になったら、お父さんの代わりにお姉ちゃんとお母さんを守ってほしい。傍にいてやれなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいだ』
エイジは後ろに下がった。代わりに向坂ゴエイが前に出た。以前に会った向坂は、クグチと接触することもままならぬ、小心で消極的な男だったが、クグチが知っているその姿よりもずっと生気がある。
『ルネ』
向坂は微笑んで言った。
『お父さんも明日宮君と一緒にこの国に残ることにした。正直いつ日本に帰れるかわからない。でもね、お父さんは生きて帰って、ルネがこの映像を見ることがないようにしたいと思う、うん。ルネ、あー、この映像を録ってる今、君はまだ二歳だからな』
向坂は赤面し、何度も何度も頭を掻いた。
『アカネ、愛してる』
声を詰まらせたのがわかった。向坂は目を赤くし、顔を拭った。
『駄目だなぁ』
失笑し、涙をこぼしている。
『その……もし、君がこの映像を見るようなことになったら……ルネにも愛していると伝えてほしい。ルネがいつか立派な……』
鼻をすすりあげた。
『……いや、立派な大人になったその後も、ずっと見守っている』
伊藤ケイタが機材
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