十一幕 野ウサギが森へ帰る時
6幕
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、しっかり!」
「……魂を刈られるってのは、こういう感覚なわけか。お前は大丈夫か?」
「俺より先に自分の心配しろっ、バカ兄貴」
「ごめんなさい! フェイ、要る分だけしか刈らないよう気をつけたけど……おじさん、ルドガーよりずっと弱ってて、だから」
「気にしなくていい。こうして兄弟ともども無事だったんだ。少し前までは考えられなかった。こんな未来、あるはずないと思ってたのに」
ユリウスは、さながら太陽の眩しさに目を細めるようにして、彼を支えるルドガーの手を握り返した。
空が――カナンの地の端が明滅した。明滅はやがて光の渦になり、臍帯のように暗い青色の〈橋〉をマクスバードに繋いだ。
「これが〈魂の橋〉……」
「行け、ルドガー。俺には構うな」
「でも」
「守ってやりたい子がいるんだろ?」
ルドガーは真鍮の懐中時計を取り出して目を落としてから、ユリウスに向けてしかと肯いた。
ルドガーとフェイで支えながらユリウスを立ち上がらせる。
ふとユリウスは何かに気づいた顔をし、自身のベストのポケットから銀の懐中時計を取り出した。ユリウスはルドガーの手の平を上に向けさせ、そこに銀時計を落とした。
「持っていけ。どれだけ助けになるか分からないが」
ルドガーは黙って首を横に振った。
ふとルドガーを優しく見つめていたユリウスが、瞬きの間だけ痛みを堪えるようにして。右腕をルドガーの背に回し、抱きしめた。
「強くなったな、ルドガー」
苦くもあり清々しくもある、フシギな面持ち。
「行って来い。お前が帰る場所は俺が守っておく」
「っ――ありがとう。行ってくる、『兄さん』」
ルドガーもユリウスの背中に両腕を回した。こちらからはルドガーの背中しか見えないが、きっとルドガーはありったけの力でユリウスの抱擁に応えているのだろうと知れた。
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