十一幕 野ウサギが森へ帰る時
6幕
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「まあ、物騒な物をご所望なのね、〈妖精〉サンは」
「別に貸してあげないこともないけれど。果たして人間に使いこなせるものかしら?」
「使いこなしてみせるよ。パパと伯父さんのためだもん」
ティースとパテルはくすりと笑い、左右対称になるように手をかざした。その二つの手の先に現れる、死神の大鎌。
大鎌はふわりと浮かんでフェイの細腕に収まった。
(思ったよりちょっと重い、かも)
「――〈魂の橋〉には生贄が『一人』要る。だったら、ルドガーとメガネのおじさん、『二人』分の魂を半分こして、一つにすれば、生贄の『一人』分になる……って思ったの」
フェイは姉妹巫女の間を通り抜け、ルドガーとユリウスの前まで、大鎌を持って戻った。
「半分ずつ合わせて、一人分……」
「確かに俺もユリウスも助かるかも――フェイ! お前やっぱすごいよ!」
ルドガーが歓声を上げてフェイをハグした。いきなりで驚いたものの、ルドガーの腕の中にいられるのはどうしようもなく幸せだった。
「じゃ、後は任せたから。せいぜい頑張ってちょーだい」
「助力は――してくれないようだな」
そこでティースとパテルは妖しく笑んだ。
「だって観てるほうが面白いんですもの」
「人と精霊が醜く争うのがね」
「勝手なことを…!」
「勝手なのは人間も同じじゃない!」
「だから面白い! 何千年経っても見飽きないくらいにはね」
ぐ、とジュードが悔しげに唇を食い縛った。
「そうね。みんな身勝手。人も、精霊も」
フェイはルドガーのハグから抜け出し、ジュードと目を合わせた。
「フェイもなくならないと思う。人と精霊の争い。ずっと、永遠に」
「そんな――」
「なくならないから、人と精霊の争いをやめさせたいって願う人だって、いなくならない」
「! フェイ……」
「ね?」
ジュードは誇らしそうに笑い返してくれた。ジュードにそんな笑い方をさせたのがフェイだという事実が、幸せだった。
「じゃあ、行くよ」
フェイは大鎌を持ってルドガーとユリウスをふり返った。
「二人とも動かないでね。手元が狂ったら魂ぜんぶ刈りかねないから。絶対絶対、動いちゃだめだからね」
並んだ兄弟は同時に目を閉じた。
フェイは手に余る大鎌をようよう持ち上げ、横一文字にまっすぐ大鎌を薙いだ。
兄弟を斬ったはずの軌道なのに、彼らは傷一つ負っていない。
しかし大鎌がすり抜けてすぐ、ルドガーとユリウスの体は翠と蒼にそれぞれ光を滲ませた。
滲む光が消えた時、ユリウスのほうがその場に膝を突いた。ルドガーが慌てたようにユリウスを支えた。フェイも大鎌を放り捨てて一緒にしゃがんだ。
「ユリウス
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