十一幕 野ウサギが森へ帰る時
5幕
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った。フェイの両手の平がカマイタチで切れた。これでいい。
両腕を斜め前左右に広げ、手を強く握って、血を地面に落とせるだけ落とした。
「フェイ! 何してんだっ」
ルドガーが切羽詰まった様子でフェイを呼ぶ。
嬉しかった。ルドガーだから、心配してくれることが、嬉しかった。
人生で初めて、きちんと手順を踏んで術式を展開する。
「二つ身となりし冥府の命の管理者よ。契約者フェイリオの名において命ず」
フェイの前方左右に光り刻まれる二つの召喚術式陣。あの人たちが知るどの大精霊の召喚陣とも重ならないはずだ。〈彼女たち〉は本来、人の身で現世に招いてよい存在ではないのだから。
「出でよ――――プルート」
二つの陣が瘴気と紛うほどの不浄の気を噴き上げる。
陣からずずず、と浮上してくるのは、鏡写しの容姿の女たち。二人の女は、やはり鏡写しの妖艶な笑みを刷いた。
「精霊として召喚を受けるのなんて何百年ぶりかしら」
「ピッタリ1000年ぶりよ。ここのとこ人間は私たちを非実在のものとして扱ってきたから」
皆が言葉もなく、フェイに解を求めている中で、先に姉妹のほうが答えた。
「あーら、マクスウェルじゃない。久しぶり〜……って言っても分かんないかしら」
「ずいぶんと人間寄りの美女に生まれ変わったのねえ。人間好きもそこまで極めると立派なものね」
「何の目的でフェイの召喚に応じたんだ」
ミラが眼光も厳しくティースとパテルを見据えた。
「そもそもお前たちは、先代のマクスウェル様が封印したはずでしょう」
「そんなのいつでも外せたわよ。永劫にかけられる封印なんてないんだから」
「面白いから放っておいたけど」
ミュゼは唖然としている。他の皆も同じだ。だが、その言い合いをいつまでも続けてもらってはフェイが困る。だから。
「ティース。パテル。どうかわたしに〈魂を刈る鎌〉を貸してください」
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