十一幕 野ウサギが森へ帰る時
5幕
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マクスバード/リーゼ港。ユリウスが「待ち合わせ」に指定した場所だ。
ユリウスがルドガーに、あるいはジュードたちに、自身を殺させるための、待ち合わせ。
「――来た」
風と土の微精霊が教える、ヒトの到来。
フェイは適当に腰かけていた埠頭の縁を立ち、ユリウスに並んだ。
「フェイっ――よかった、ユリウスさんと一緒だったんだね」
呼んだジュードを初めとして、ルドガーを除くヒトたちが全員集合していた。
ジュードの呼びかけに答えようとしたフェイは、背後にもう一つ、大きな精霊の力が働いたのに気づき、遙か海の向こうをふり返った。
〈カナンの地〉へと、赤黒い臍帯のような線が地上から伸びていた。
「あれが〈魂の橋〉だ。ビズリーが〈カナンの地〉へ渡ったんだろう」
「もしかしてエルが!?」
エリーゼの顔色が青くなる。
「エルはクロノスに対抗する切り札だ。おそらく、リドウの命を使ったんだろう」
フェイは目を伏せた。――分かっていた。クランスピア社のエントランスでリドウを逃がすことが、リドウの命を脅かすことになると。
ただ、その時のフェイは、ルドガーがリドウを討つからだと思っていたという点が、予想と異なったが。
「ずっとビズリーは、俺とリドウを〈魂の橋〉の材料と見なしていた。あの男は……そういう奴なんだ。――ルドガーは、来ないんだな?」
「ユリウスさんの命は奪えないって」
「まったく、あいつはいつまで経っても――」
「ああ。迷惑はかけない。ただ、全てが終わったら、ルドガーに伝えてくれ。勝手な兄貴で悪かった、と」
ユリウスは双刀の片方を抜こうとした。
フェイは小走りにユリウスに駆け寄って、ユリウスの手を上から両手で押し留めた。
それと時を同じくして、埠頭に怒号が響き渡った。
「ユリウスッ!!」
「ルドガー……!?」
ルドガーはジュードたちの間に割り込んでユリウスに駆け寄り、ユリウスの正面に立った。
息を切らしている。きっとトリグラフから全速力でここまで走って来たのだろう。
(やっぱりダメだよ。こんなにお互い大事に想い合ってるのに、殺して殺されてなんて。絶対ダメ)
ルドガーは逡巡するように視線を泳がせていたが、やがて双剣の柄に手をかけ、まっすぐユリウスを見た。
ユリウスは安心したように微笑んだ。
「待って!」
ルドガーとユリウスの目が、ジュードたちの視線が、同時にフェイに集まった。
「ホントのホントにこうしなきゃダメなのか、一度だけ試させて。これ以外の方法」
フェイはユリウスとルドガーの間からどき、全員を見渡せる位置まで歩いて行って、皆をふり返った。
しゃがむ。声に出さず、風の微精霊に対し信号を送
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