十一幕 野ウサギが森へ帰る時
4幕
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中でさえ、ヴィクトルを壊せず自分が死にかけた。
皆がルドガーを優しいと、お人好しだと言う。
そうではない、そうではないのだ。どうしてジュードたちは気づかない。
ルドガーはあの中の誰よりも「人間」なだけだ。
ルドガー・ウィル・クルスニクはどこまでも「普通」の「人間」だ。
「ジュードたちの〈世界〉は、この天と地の命のすべて。パパの〈世界〉は、おじさん、あなたなんだよ。みんな自分たちの〈世界〉が食い違ってるの、気づいてない。気づいてないの。パパが気づいちゃったら、パパの中でジュードたちはトモダチじゃなくなっちゃう。セカイに独りで置いてけぼりになっちゃうんだよ!」
食い違いが決定的になればフェイにも止められない。かつて友を自ら葬った父のように、「ルドガー」と「ジュードたち」は別れ別れで、二度と心は交わらない。
「分かってくれ。これしかないんだ。それともフェイは、ルドガーが〈橋〉になって死んでもいいと思うか?」
フェイは慌てて、色のない髪を振り乱して首を横に振った。
「長居はまずい。俺は待ち合わせに指定した場所へ行く。君は――ここで待っていればルドガーたちが来るだろうから、残ったほうが」
フェイはユリウスの白いコートを握り、再び首を振った。
「フェイが、おじさん、死なせない」
「……フェイ、さっきも言ったが」
「ダイジョウブ」
フェイ・メア・オベローンは〈妖精〉を冠する人間だ。〈魂の橋〉のカラクリを、自分ならば突破できるかもしれない。
否、突破するのだ、この身の異能で。
それがきっと、フェイがルドガーたちと出会った意味だから。
「俺の姪っ子たちはどっちもタフで困る」
「ゴメンナサイ」
ユリウスは苦笑してフェイに背を向け、歩き出した。
フェイはユリウスの後ろを、子カルガモのように付いて行った。
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