十一幕 野ウサギが森へ帰る時
3幕
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精〉の真価は精霊術ではない。精霊が、己が司る属性を通して掌握する、世界各地の情報。〈妖精〉は霊力野を通してそれらの情報を知ることができる。
〈妖精〉に把握できない事柄はなく、〈妖精〉の前にはいかな機密も通用しない。
全能ではなく、全知。フェイにとってはどうでもよかったモノ。
(だって他人のことなんて知ってもどうしようもなかったもん。〈温室〉の中には人間はいなかったし、何より他人なんてどうでもよかった。わたしは会うことも話すこともない人たちだもん。でも今は違う。知ったから、できることがある)
フェイはリドウの上からどいた。
「何で殺さない」
「パパとお姉ちゃんが大ケガした時、治してくれたの、あなただって聞いた。二人の代わりに、お礼する」
「いいのかよ。ここで俺を逃がしたら、俺はお前のパパを殺しに行くぜ」
「イイの。パパが勝つから。そしたらあなた、死んじゃうから。だから、パパたちができない分のお礼を、フェイが今先にしておくの」
「はっ――今のお前、とびっきり最悪な女だぜ」
フェイはただ笑んで小首を傾げた。
「フェイ!!」
ユリウスの呼び声。フェイがリドウと話す間に埒を明けてくれていたようだ。出口へ続く廊下の掃討は終わっていた。
「じゃあね、お医者さん。パパとお姉ちゃんを救ってくれてありがとう。サヨナラ」
じれったそうに待つユリウスの前まで一直線に駆け抜ける。
ユリウスはフェイが至近距離に来るや、手を掴んで即座にエントランスを抜けて正面玄関へ走り出した。
クランスピア社の外に出てからは、ユリウスに手を引かれるままトリグラフの街を走った。
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