十一幕 野ウサギが森へ帰る時
2幕
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みを浮かべたが、すぐにジュードたちをふり返った。
「フェイに任せよう。俺たちはエレベーターに」
「本当にいいの、フェイ?」
「ヘーキ。だからジュード、わたしのもう一人のパパをオネガイ」
エレベーターが閉じるまで、フェイは微笑んでルドガーたちから目を逸らさなかった。
そして、リドウたちに向き直った時、その顔から笑みは消えていた。
「さあて。どう楽しませてくれるのかな、〈妖精〉サン」
フェイは一度だけ自身を抱くようにして、勢いよく体を広げた。
エントランスホールに空色のドームがぶわっと広がった。
ドームは携帯版〈クルスニクの槍〉の磁場を打ち消し、あるいは携帯版〈槍〉そのものを爆発させた。「今何をした」「何が起きた」などと叫ぶエージェントたち。
これもまた〈妖精〉になるまでの過程で身につけた特殊スキル。――どんな属性も付加しない、フェイの体内の純粋なマナの「放出」。
――自らマナを剥ぎ取って放出するなど、少し前までのフェイなら絶対にできなかった。できても錯乱していた。
それができるようになったのは、今日までの多くの積み重ねがあるから。
「〈クルスニクの槍〉の基本構造はマナを吸い取る装置でしょう。ならパンクするまでマナを吸わせれば自壊する。携帯版じゃ、吸ったマナを溜めとくパックの容量も大したものじゃない」
「それだとお前の命に関わるぞ! 人間のマナだって精霊と同じで有限だ、放出すればお前の体が…!」
イバルが怒鳴る。それがイバルの優しさからのものだと今のフェイには分かる。
彼はクランスピアの人間なのに、非情に徹しきれない。きっとミラはそんな彼だから巫子にしたのだろう。
「本気出したの、ミラさまと戦った一度きりだから、わたしもどうなるか分からないけど」
フェイはダンスの誘いに応えるように手を挙げる。
実際こうなったフェイには視えているのだ。フェイを舞闘にいざなう精霊たちが振り撒く、煌々しいマナが。
「わたしのぜんぶを、出すね」
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