第四章 誓約の水精霊
幕間 アマリリス〜 アップルブロッサム〜
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丘の麓に広がる花畑
「綺麗……」
その花畑は、赤い剣の荒野に不似合いに過ぎる程……美しい花畑であった
「見たことも無い花ばかりね」
様々な種類の花があり、中には自分の背丈ぐらいの小さな木に咲いた、淡いピンク色の五枚の花弁の可愛らしい花もある
「何ていう花何だろう……?」
見覚えの無い花に、小首を傾げる
「あれ?」
誇らし気に咲き誇る花の種類は、十種類以上はあるだろうか……今までのもの哀しい光景に沈んでいた気持ちを慰めるため、花畑を歩きながら、心を癒していると、ふと足元に、今にも咲こうとしている花を見付けた
「もう少しで咲きそうね」
膝を曲げ、顔を近づける
「あれ、隣にも……」
今にも咲きそうな花の近くには、まだ他に咲こうとしている花を見付けた
「……何かこれ……気に食わないわね」
今まさに咲こうとしている花は三本……
まだ蕾の花は一本……
……まだ芽が出たばかりの花が一つ……
蕾の状態でも、鮮やかな赤色が美しい、その蕾の何が気に食わないのか、指先をつんつんと突き立てる
「む〜……何でだろ?」
眉間に皺を寄せながら考えるも、分からない
「まあ、いいか」
最後に指で蕾を弾き、膝を伸ばして立ち上がると、丘の上に立つ男を見上げる
「……シロウ」
丘に立つ男は、背中しか見えないが、悲しんでいるのを感じる……
たった一人でこの赤い荒野に立つ士郎を見つめていると……胸を鋭い刃物刺されたかのような痛みを感じた……
何故か……分かった……
その痛みは……きっとシロウの心が感じている痛みだと……
知らず……涙が溢れた……
……不意に……理解した……
「……ああ……そっか……」
剣が突き刺さった赤い荒野が広がるこの世界は……
「シロウの……こころ……なんだ」
唐突に……湧き上がる……
「シロウ……」
……切なさ
「シロウ……ッ!」
……ぬくもり
「シロウッ!」
……愛おしさ
溢れ出す想いに、思わず駆け寄ろうとした瞬間
「あ……」
足元で……
「こ……れ……」
花弁が開き……
「ああ……分かった……」
……理解する……
「これ……わたしだ……」
淡くピンク色に色付いたその花は、果実のような甘い匂いを香らせ……
誇り高く咲き誇る……
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